リンパ腫治療薬が著効
全身性エリテマトーデス
治験に向け準備進む

 膠原(こうげん)病の一つで難病にも指定されている全身性エリテマトーデス(SLE)に対し、B細胞リンパ腫の治療薬「リツキシマブ」(商品名、リツキサン)を使うと大きな効果があることが分かってきた。
 産業医大(北九州市)第一内科の田中良哉教授は「リツキシマブは全身の炎症や免疫異常を強力に抑えるだけでなく、症例の中にはSLEの症状がきれいに収まってしまったと思われるものがある」と話す。近く治験開始に向けた申請を行う予定だ。
 
 ▽全身に障害
 SLEの原因はまだ不明だが、本来、体に侵入した異物をやっつけるはずのリンパ球が、自分の体を攻撃してしまう自己免疫疾患ということが分かってきた。
 同じ自己免疫疾患のリウマチでは主に関節に障害が出るが、SLEは顔に出る赤い発疹(ほっしん)のほか、全身のさまざまな場所が障害を受け、多彩な症状を起こす。
 現在、治療は炎症などを抑えるため、ステロイド剤や免疫抑制剤が使われ、ある程度はコントロール可能だが、副作用の多いステロイドを一生のみ続ける必要がある。
 一方、B細胞リンパ腫は、「T」と「B」に大別されるリンパ球の片方Bリンパ球ががん化する病気。リツキシマブはBリンパ球表面に現れる“目印”を狙ってくっつき、Bリンパ球を殺してしまう。遺伝子組み換え技術によるモノクローナル抗体と呼ばれる薬だ。

 ▽免疫をリセット?
 Bリンパ球とTリンパ球はお互いに協力して働くが、自己免疫疾患を引き起こす場合も、双方が信号を出し、活性化し合って体を攻撃する。
 「SLEで過剰に活性化しているBリンパ球を、リツキシマブでやっつけてしまえば、Tリンパ球もおとなしくなるはず」と田中教授。
 35歳の女性患者のケースでは、腎臓や中枢神経などが障害を受け、ステロイド大量療法のほか、免疫抑制剤、抗がん剤、血しょう交換と、あらゆる手が尽くされたが、さらに進行し、障害が中枢神経に及んで意識不明の状態になった。
 そこでリツキシマブを使ってみると、2回の点滴投与だけで意識が戻り1週間でよくなった。1カ月後には普通に歩けるようになり、現在全く普通に働いているという。
 「リツキシマブで、いったんBリンパ球がゼロになった後、再び増えてきたが、病気の指標となる自己抗体を測ってみると、ゼロのまま。普通考えると、再び自己抗体ができるはずだが、不思議。免疫異常が“リセット”され、治ってしまったのだろうか」と同教授。

 ▽治療の突破口に
 別の患者でも調べてみた。23年間SLEの56歳の女性。
 子宮がん手術後に溶血が起こり、さらに赤血球凝集も起こったため、リツキシマブ投与。溶血も赤血球凝集も収まった。
 Bリンパ球を追跡してみると、いったん消え、2カ月で戻った。やはり自己抗体は激減しており、今度はTリンパ球を調べてみると、活性を示す指標は下がったままで、Bリンパ球からの信号もほとんど受け取れないようになっていた。
 さらにもう一例の女性患者でも、同様のことが見られたという。
 英国では、リツキシマブをSLE患者に用いた論文が出ており、2回の点滴で、6人のうち5人が半年間よい状態が続いているという。
 現在、米国では関節リウマチとSLE、英国はSLEへのリツキシマブの治験が始まっている。
 田中教授は「リツキシマブはBリンパ球の数を減らすだけでなく、Tリンパ球の活性も抑えることが分かった。SLE治療の突破口になりそうだ」と話している。

 

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