弱い衝撃波で狭心症治療
血管新生し血流が改善
重症患者にも負担なく

  体外から弱い衝撃波を当てるだけで心臓に新しい血管ができ、血流が増える―。手術に耐えられない重症の狭心症患者に対する、このような新しい治療が九州大病院九州大病院(福岡市)で行われ、患者への負担や副作用が極めて小さい治療法として注目を集めている。
 
 ▽ニトロ錠不要に
 「それまで手放せなかった、狭心症の発作を止めるニトログリセリン錠がいらなくなり、ゴルフができるようになった人もいます」
 同病院循環器内科の下川宏明(しもかわ・ひろあき)助教授によると、これまでに臨床試験で衝撃波治療を受けた人は10人。うち9人が治療後1年を経過し、個人差はあるが全員に効果が認められているという。
 9人はバイパス手術などができない重症患者ばかり。トイレに行く時や入浴時にニトログリセリンを服用しないと発作が起きたり、数100メートル歩く間に2回も3回も立ち止まって休んだりする必要があった。
 治療後はその服用が不要になり、階段を休まずに上れるようになった患者も。「途中で一度も休まずに病院まで来られた」と喜んで報告した患者もいるという。

 ▽結石用の10分の1
 狭心症は心臓の筋肉に酸素や栄養を送る血管が動脈硬化のために狭くなって起きる。運動したりストレスがかかったりすると心筋に必要な酸素が足りなくなり、胸などに痛みや圧迫感を感じる。
 動脈硬化で血管が広範囲にもろくなり、手術できない患者も多く、米国や日本などで遺伝子治療などにより血管を増やす血管新生療法の研究が行われている。
 だが下川助教授によると、これらの治療は全身麻酔をかけて開胸手術を行い、心筋に直接注射する必要がある上、効果を保つため治療を繰り返さなければならない場合もある。だが患者は高齢者や糖尿病で体力のない人が多く、手術を繰り返すことは事実上難しい。
 そこで下川助教授は「手術をしないで血管を増やす方法」を検討。培養した血管内皮細胞に衝撃波を当てると血管をつくる血管新生因子が増えた、との報告に着目した。国内の企業に衝撃波のノウハウがなかったため、スイスのメーカーに心臓病専用の衝撃波治療装置の開発を持ちかけた。
 培養細胞やブタを使った動物実験で、結石破砕治療の約10分の1の弱い出力で衝撃波を当てると血管新生因子が最も効率よく増え、新しい血管ができることを確認。学内倫理委員会の承認を得て、2003年1月から臨床試験を開始した。

 ▽将来は外来でも

 まず超音波エコーで治療を施す心臓の部位を確認。治療範囲に応じて20―40カ所に対し、1カ所当たり200発、心拍に同期して衝撃波を照射する。これを1週間に3回実施。1カ月後に検査し、効果が不十分ならば追加治療する。
 患者はベッドで横になっているだけ。衝撃波が当たる際は「少し押されるような感じ」がするが痛みなどはなく、「気持ちが良い」と眠ってしまう人もいるという。出力が弱いため心筋を痛める心配もない。
 現在は対象を重症の狭心症患者に限定しているが、心筋梗塞(こうそく)後の心不全を防ぐ効果や、糖尿病患者に多い閉塞(へいそく)性動脈硬化症でも足の血流を増やす効果があることなども分かってきた。
 衝撃波が肺の空気や肋骨(ろっこつ)に当たらないようにする必要があるが「心エコーの訓練を受けた循環器専門医なら、将来は外来でも治療できるようになるだろう」と下川助教授。「患者負担や副作用が小さく、繰り返しが可能。患者にとって優しい治療法だ」と話している。




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