がん告知で医師研修
患者に細心の気配りを
がんセンター東病院


 日本でもがん告知は一般的になってきた。患者に大きな衝撃を与えるだけに、悪い知らせをどう伝えるか、医師には細心の気配りが求められる。だが日本の医学界では告知教育はされてこなかったのが現状。そんな中、国立がんセンター東病院は全国の医師に告知法の訓練を実施、既に100人以上が受講している。

事務的な告知も

 
日本でも「がん治療には真実の告知が必須」と考えられるようになったのに加え、入院期間も欧米並みに短くなったことが告知に拍車を掛けた。10年ほど前から早期がんでの告知が増え、今では進行がんでも告知されるようになっている。初診時の問診票に告知の希望を尋ねる病院もある。
 告知にはがんと診断された時のほか、進行や再発が確認された際や積極治療の手段が尽きた場合もある。後者ほど事態は深刻で、告知をためらう医師もまだおり、手術や抗がん剤治療の継続で患者が無意味な負担を強いられることもある。
 患者の感情を考慮せず、事務的に告知する医師がいるのも事実。東大病院緩和ケア診療部の中川恵一(なかがわ・けいいち)部長は「かつての告知の是非の議論を知らない若い医師には〝酷知〟になっている例も見受けられる」と指摘する。


礼儀正しく目を見て

 がんセンター東病院では精神腫瘍(しゅよう)学開発部が中心となり、1999年度から毎年、国立病院の医師を対象に訓練を開始。日本サイコオンコロジー学会主催の訓練も既に2回開催した。
 参加者は外科、内科、放射線科など、がん治療の一線を支え、告知の難しさに直面する医師たち。訓練は2日間で、告知技術の講習を受け、模擬患者を相手にさまざまな状況を設定して告知を繰り返す。
 当初は米国のテキストを使っていたが、東病院の患者意向調査を基に、日本の実情に合わせたものを開発、今年から使用している。悪い知らせを受け止めてもらうため、心理学を駆使した内容。
 基本技術は「身だしなみを整え、静かな部屋で、礼儀正しく」「患者の方を向き、目を見て話す」など、まさに人に接する際の基本。さらに告知の環境設定や悪い情報の伝え方、伝える情報の内容、そして医師が最も苦手とする安心感や情緒的支援の提供の4点について、細かく助言する。


沈黙に耐える

  がん告知では、医師の態度が患者の不安に影響する。内富庸介(うちとみ・ようすけ)・精神腫瘍(しゅよう)学開発部長は「ちょっとしたテクニックで患者の受け止め方は全く違ってくる」と強調する。
 例えば、衝撃で口を閉ざす患者もよくいる。重苦しさに医師は先を急ぎがちだが、患者は気持ちを整理しようとしている。沈黙に耐えて、患者が本当の思いを話すまで待つことが大切だという。
 参加した医師は「教科書に載っていない知識が得られた」「すぐ使える」と口をそろえる。2月に研修を受けた国立病院機構仙台医療センター総合診療科の高橋通規(たかはし・みちのり)医長も「実際の現場で生かせた」と話す。
 再発も積極治療の手段が尽きたことも知らされないまま転院してきた患者に、研修を参考に告知したところ、患者は平静に受け入れ、家族にも感謝されたという。「勘と経験だけでやっていた以前なら、告知をためらっていた」と振り返る。
 それだけではない。一般患者の問診にも応用し、難航していた診断確定のヒントを引き出したこともあるという。
 ただ、がんセンターでの訓練は年間に20人程度が限度。内富部長は「秋ごろまでにはテキストを完成させ、各地で研修できるようにしたい」と話している。






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