『がんとこころのケア-2』

 大地震に見舞われる心 
内富庸介・国立がんセンター部長

 


 
 ―がん患者の心のケアが注目されだした背景には何があるのでしょう。

 「告知の問題と切り離せません。入院期間の短縮など、さまざまな要因で日本でもここ数年で急速に告知されるようになっています。現実にいや応なく直面する人に心のケアは不可欠です」

 ―告知を受けた患者の心の動きは。

 「直下型地震に見舞われたようなもの。衝撃や絶望、『何で自分が』という怒りで日常生活への適応が大きく落ちます。数日後から、まるで余震のように心の浮き沈みを繰り返しつつ、徐々に回復し始めます」

 

 ―元に戻りますか。

 「多くは2週間程度で現状に前向きに対応しだします。でも実は、日常生活を送る最低レベルまでしか回復しません。『治療はうまくいくのでは』などと楽観的な見通しを持てるのもこのころ。これは『否認』と呼ぶ心の防衛反応です。気持ちが整理でき、現実を完全に受け入れるには1―3年かかるのが普通です」

 ―気を付けることは。

「十分回復せず、うつ病や適応障害になる人や、退院直後に再び落ち込む人もいます。こういう場合は自殺に注意が必要。これは世界共通の問題で、自殺率は一般人の2倍弱ともいわれます」

―それはなぜですか。

 「入院中は手厚い看護を受け、同じ病気の仲間もいる。でも帰宅した途端、孤立感が高まる。『もう手遅れでは』『自分は社会にいる価値がない』などと思ってしまう。実際、職場復帰が易しくないがんの場合は自殺の危険が高まります。最初の1年は要注意です」


―周囲が気を配るべきことは。

 「家でも職場でも、自分の気持ちを打ち明けられる人が1人でもいると大きい。そして『あなたが必要』というメッセージを送り、居場所を作ってあげることです」


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