|
生体内のタンパク質や薬の分子などの動きを体外から観察する「分子イメージング」技術。文部科学省の
プロジェクトとして、その開発に当たる施設「理化学研究所分子イメージング研究プログラム」(神戸市中央区)が本格稼働した。
試験管や取り出した細胞の中でしか分からなかった現象が体内で追跡でき、生命科学研究の進展や新薬開発につながると注目されている。
▽リアルタイムで画像表示
同施設が取り組んでいるのは、がんの診断で知られる陽電子放射断層撮影装置(PET)を使った分子イメージング。分子に目印となる放射性化合物
(プローブ)をくっつけて投与し、放出されるガンマ線を検出することで、その分子の分布や量をリアルタイムで画像表示できる。
渡辺恭良プログラムディレクターは「PETは高感度、高精度のため、ごく微量の分子を追跡できる。被ばくも少ない」と利点を説明する。
プロジェクトで同施設は「創薬候補物質探索拠点」と位置付けられ、新しいプローブの設計、合成や、マウスやサルを使った生体内でのプローブの機能評価などを担当する。
▽1カ月が、1日で
これまでの成果で特に注目されているのが、新しい合成法と装置で、半減期が20分と短い炭素11を使ったプローブを5分で自動的に合成。それを実験エリアまで床下を搬送するシステムも備えており、渡辺氏は「大学では1カ月かかるプローブ作りが、1日で可能になる」と言う。 また、実験動物専用のPETで、新薬の候補物質の体内での動態研究や効果判定などを進め、人間での臨床研究へとつなげる。
▽国際競争に
分子イメージングによって新薬候補物質の有用性が短時間で分かるようになれば、10年以上かかっている新薬の開発期間が、大幅に短縮できる可能性がある。また、患者1人1人に合った薬剤の使い方など、さまざまな応用も期待される。
「生命科学研究の成果を創薬へと飛躍的に導く」(渡辺氏)技術だけに、世界的な競争も激化。同施設は、プロジェクトの「PET疾患診断研究拠点」である放射線医学総合研究所(千葉市)などと連携して、国際競争に負けない研究開発を進める予定だ。
|