尿失禁を治そう
あきらめずに受診を
治癒率高いTVT法
 尿失禁は治る。「年だからしょうがない」とあきらめていませんか。女性では50代以降で3分の1以上の人が尿失禁を経験しているとされている。男性でも脳卒中の後やパーキンソン病など、脳や神経に障害を受けた場合に多く見られ、寝たきり生活の原因にもなりかねない。
 福井医大泌尿器科の横山修教授は「おっくうがらずに泌尿器科を受診してほしい。今はQOL(生活の質)重視の時代。失禁のない生活が、どれだけ素晴らしいか分かってもらえると思う」と話している。  
▽腹圧性と切迫性
 尿失禁は大きく腹圧性と切迫性の2つに分かれる。
 女性に多いのが腹圧性尿失禁だ。せきやくしゃみ、ジャンプなどで、膀胱(ぼうこう)が圧迫されて尿漏れするが、男性にはほとんどない。女性の尿道が男性に比べてかなり短いことも関係しているようだ。
 「腹圧性の尿失禁は、閉経を迎えた女性で、女性ホルモン(エストロゲン)が減少する結果、起こりやすいと考えられている。エストロゲンは尿道を締める平滑筋の収縮力をサポートする働きがあり、その減少によって尿道の粘膜が薄くなり、尿道自体の働きも落ちてくる」と同教授は指摘。
 「統計的にはお産の経験が多いほど失禁は多くなる。尿道の筋肉や神経がお産で損傷するためと考えられる。中高年にとっては肥満も危険因子」と話す。
 人間が二足歩行になった結果、おなかの圧力がすべて骨盤底にある筋肉や筋膜、靱帯(じんたい)に加わってくる。年とともに筋力が落ち、筋膜や靱帯の緊張が落ちてくることも尿失禁に関係している。
 
▽過活動膀胱
 切迫性尿失禁は、膀胱が自分の意志とは無関係に収縮し、急に尿意を催したり、トイレに行きたいと思っても、間に合わずに漏れてしまう。原因はよく分かっていない。
 脳血管障害や脳神経変性症、前立腺肥大症などで男性が多いと言われてきたが、最近の調査で女性も多いことが分かってきた。
 「最近は“過活動膀胱”という考え方も注目されている。尿意切迫感(急に尿意が起こり、トイレに駆け込む状態)があることで、多くは頻尿が伴い、切迫性尿失禁が合併していることもある。現在、膀胱の異常収縮メカニズムを解明中。脳で働く遺伝子が作るタンパク質により、神経回路が再構築されていることが分かってきた」と同教授。
 寝たきりの人では、3人に1人が脳血管障害が原因。失禁や頻尿のため、おむつを外せず、そのために寝たきりになったということもあるという。
 尿失禁の治療法だが、腹圧性の場合、膣(ちつ)や肛門(こうもん)を締めたり緩めたりする「骨盤底筋体操」を毎日行うことにより、筋力が元に戻り、若い人なら3~4カ月続けるとよくなることが多い。
 しかし、年配者ではいったん緩んだ靱帯や筋膜は元に戻らないこともあり、手術が必要になってくる。

▽TVT法
 横山教授は手軽で治癒率が非常に高いTVT法を勧めている。
 「この方法は、ナイロンのテープを尿道に巻き付け、閉鎖機構がうまく働くようにサポートする。手術は30分で済み、おなか側2カ所と膣の1カ所を小さく切ってテープを入れ、装着するだけ。テープがメッシュ状なので体の組織に自動的に固定されてしまう」
 切迫性では、今のところ、対症療法が中心。膀胱レベルで収縮を抑える抗コリン剤を服用する。それが効かない場合、電気刺激療法で膀胱の知覚の方に働き掛けて活動を弱めたり、神経をブロックして刺激を遮断することもあるという。
 横山教授は「失禁は病気だと思っていない人も多いようだが、治る病気であることを広く知ってもらいたい」と話している。
 

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