簡単、効果的な手洗い
感染予防に再認識必要

 手洗いは、最も簡単で最も効果的な感染予防対策だ。「“たかが手洗い”と思っている医療関係者が多いが、きちんとできていない。“されど手洗い”で、重要であることを再認識する必要がある」と、京都府立医大の藤田直久助教授(感染対策)は強調する。
▽速乾性の消毒剤が普及
 医療現場で対処が必要な病原体は細菌やウイルスなどさまざまだ。手洗いの方法は、大腸菌、緑膿(りょくのう)菌などの「通過菌」を落とすほか、皮膚や粘膜にいるブドウ球菌などの「常在菌」も除去するかどうかという目的によって異なる。水とせっけんによる日常の手洗いは、通過菌を落とすのが目的だが、場面に応じてより強力な方法が必要だ。
 「集中治療室(ICU)で仕事を始める際などの衛生的手洗いは、消毒剤を使って殺菌する。通過菌を洗い流し、常在菌を減らすのが目的。さらに患者への感染を徹底的に防御する手術用手洗いは、ブラシと消毒剤で、常在菌もできるだけ減らす」
 最近は速乾性の消毒剤が普及。即効性の殺菌作用や、肌を守る保湿作用があるが、洗浄効果はないので、数回に1回は水で洗い落とすことが必要だ。
 藤田助教授によると、手洗いは1822年にフランスで、塩素を含む溶液がにおいを消す効果があるとされたのがきっかけで注目された。1847年にオーストリアのゼンメルワイス医師が、病理解剖をした医学生による感染を防ぐため、さらし粉でにおいが消えるまで手洗いをすると、妊婦の分娩(ぶんべん)後の死亡率が低下することを確かめ、効果があるとの評価が確立した。
 手を洗わないと、どうなるのか。黄色ブドウ球菌を保菌する看護師が手を洗わずに新生児をケアすると54%が感染したが、手を洗うと14%に下がったとの報告がある。だが、さまざまな調査では、医療従事者の手洗い実施率は50%を下回っている。特に看護師より医師の方が洗わない傾向がある。
▽うちわに手を洗いましたか?
 「例えばICUでは、患者の1回の処置ごとに手洗いが必要で1時間に20回ほどにはなるはず。だが、とてもそこまでできず、忙しいほど洗わなくなる」と藤田助教授。また、手袋をしていても手洗いの代わりにはならない、と強調する。
 そこで有効と考えられるのは、患者側から問い掛けて、医師や看護師に注意を促す方法だ。直接言いにくいなら、「手を洗いましたか?」と書いたうちわを使うなど、医療関係者の目にとまるようにするのが有効ではないか、と藤田助教授は提案する。

 

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