手足動かし生活の一助に
まひした筋肉を電気刺激
先端技術使うFES

 脳卒中や脊髄(せきずい)損傷でまひしてしまった手や足を、最新のコンピューター制御技術と電気刺激を使って動かし、食事や起立、歩行などを可能にするリハビリテーションが進みつつある。「機能的電気刺激(FES)」による機能再建と呼ばれる。  FESの最大のポイントは、ほかからの力を使うのではなく、自分の力で体を動かせるという点だ。
 
 ▽高度先進医療
 「発電所は駄目になっても、残っている電信柱や電線が使えるというのがFESの原理。脳卒中や脊髄損傷の場合に、脳や脊髄に代わって、コンピューターが生きている電線である神経を刺激して筋肉を動かす」と秋田大病院リハビリテーション部の島田洋一助教授。
 秋田大では高度先進医療としてFESが受けられる。「狭い所や短い距離を自分で動けることを目指している」と話す。
 FESは、筋肉に電極を付けて電気刺激を与え、筋肉を収縮させて目的とする動きを引き出す。  筋肉を動かす“設計図”である電気刺激のソフトは、健常者の動きのデータを基に、コンピューターに患者の動きを学習させて作成、患者のベルトなどに付ける小型の刺激装置に入力する。
 現在、電極には①皮膚に張り付ける表面電極②筋肉に完全に埋め込んでしまうもの③電極は筋肉に取り付けるが、電線が皮膚の表面に出ている経皮的埋め込み―の3種類ある。
 ▽ジュースを飲む
  「ただ、表面電極は張るたびに反応が違ったり、短期間しか使えないという欠点がある。実用性の点では厳しい」と島田助教授。
 既に米国では、完全埋め込み型が主流。秋田大でも移行が進んでいるが、現在は経皮的埋め込み型が使われている。
 電極は体内に埋め込むと六週間で安定する。電気的にも安定し、最長13年間もっている。
 FESは手足が動かない四肢まひで、手の機能再建が一番進んでおり、食事をしたり、ブラシを使って上手に髪をとくこともできる。
 缶ジュースを飲むモードでは、まず左手で机上のスイッチを入れると、右手が缶ジュースをつかみ、口のところに持っていく。飲む動作も、全く普通の人が飲んでいるようなスムーズな動きだ。
 「ブラシの動きが一番難しいが、きれいに使えることが大事。食事では、ごわごわした赤飯も食べられるほど、しっかりスプーンを持てる」(同助教授)

 ▽装具と組み合わせ
 脳卒中で右手足が利かない片まひの男性。かかとにセンサーを付けて立ち上がると、FESが働き、きれいに歩ける。登山もしているという。
 両足まひのケースでは、転倒の危険があるため慎重に進められている。
 それでも、足首など、足の一部を固定する「装具」との組み合わせで、車いすから立ち、歩行器を利用して歩けるようになったり、胸から下が完全まひの人が連続1時間立つことが可能になり、料理などができた?などの成果が得られている。
 「疲労でひざが折れるのを、われわれが開発したセンサーをひざの裏に付けて防止できるようになった」(同助教授)
 治療的電気刺激(TES)というのもある。手足がまひしていると、運動不足から体全体が弱る。FESで足を動かすなどの訓練をすると、筋力を増強し体の血液循環がよくなる。筋肉の委縮を防ぎ、将来の再生医療にも期待がつながる。
 島田助教授は「今のFESは先端ハイテク技術。リハビリをして、それでも限界がある人、モチベーションがしっかりしている人を対象にやっている」と話している。

 

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