子供の頭痛に要注意
多彩なミトコンドリア病
発作にはアルギニン

 子供の頭痛で気になる病気の中に「ミトコンドリア病」がある。症状が多様で、なかなか気付きにくい。特に脳卒中のような重い発作を起こす「MELAS」(メラス)と呼ばれるケースもあり、早期発見が大事だ。
 このメラスに対しては最近、アミノ酸の一つアルギニンの投与が治療・予防に劇的な効果があることが分かり、厚生労働省研究班が研究を続けている。
 
 ▽見逃しやすい
 班長で、久留米大医学部の古賀靖敏・助教授(小児科)は「症状をうまく表現できない小児期は見逃しやすいが、頭痛のほか、難聴や低身長、吐きやすさ、運動おんちなどがあり、母親系統に片頭痛や糖尿病などがある場合は、一度はミトコンドリア病を考える必要がある」と指摘する。
 ミトコンドリアは「細胞内小器官」とも呼ばれ、体の細胞の中にあって、そのエネルギーをつくり出す役割をしている。
 ミトコンドリアは細胞の核DNAとは別に、独自にDNAを持っており、母親からだけ子孫に伝わるという特徴がある。
 細胞の核DNAと比べ、その複製には間違いが多いとされ、約16000ある塩基配列のうち、既に180カ所以上の点変異が見つかっている。場所によっては、遺伝子に不具合が起こり、エネルギーづくりに影響が出てくることにもなる。
 ▽MELAS
 ミトコンドリアの異常は、特に細胞内でエネルギーを大量消費する脳・中枢神経系や筋肉の病気となって現れやすい。
 そのほか、さまざまな臓器に障害が出ることが多く、日本では糖尿病を含めると患者は10万人を超えるとも言われる。
 「特に、糖尿病については、約650万人いる患者の2割(130万人)はミトコンドリア病と言う人もいる。症状が多様で専門家が少なく、診断もつきにくい。ミトコンドリア病で、片頭痛や低身長の患者なら、どのぐらいいるか分からないほど」と同助教授。
 昨年からの班研究で、全国から典型的なミトコンドリア病約750例を収集。うちメラスは約3割だった。  メラスの発生頻度は低いが、ミトコンドリアDNAの特定の場所で変異を起こしていることが分かっている。フィンランドの調査では、人口10万人当たり、メラス型の変異を持つ人は16・3人。
 ▽予防効果
 「メラスの平均像は、小学校高学年で脳卒中の小発作を起こし始め、何回か大きな発作を起こして脳が損傷を受け、生活の質(QOL)が落ちて死に至ることが多い」(同助教授)
 小発作の症状は、目がちかちか(後頭葉の血流低下)、半身けいれん、一過性の失明など。
 古賀助教授が、アルギニンに着目、治療に応用したきっかけは25歳の女性患者だった。脳卒中様の発作時に、血中アルギニン値が非常に低いことに気付いたという。
 患者は血管がしぼみやすく、それを広げるアルギニンが少ないということを示していた。
 メラスの子供が大きな発作で意識不明の状態になった時に、体重1kg当たり0・5gのアルギニンを静脈注射すると約30分で発作が収まり、1日でほぼ回復することなどが分かってきた。
 狭くなって血流が通りにくくなった脳血管などが、アルギニンの投与で押し広げられるようだ。
 古賀助教授は「これまでの研究では、アルギニンは発作によく効くが、発作予防の方が有効と思う(予防では経口投与)。効果実証のため厳密な治験を早く実施したい。大人の場合は、子供とは血管の反応が違うようで、慎重に研究を進めている」と話している。

 

ヘッドラインへ戻る

記事、写真、グラフィックスの無断転載を禁じます。
2004 Kyodo News (c) Established 1945 All Rights Reserved