脳を血管内から治療
塞栓症も可能に
まだ少ない専門医
 脳卒中などの脳疾患を、血管内を通るカテーテルという極細の管を使って治療する血管内治療。エックス線で透視しながらカテーテルを使うことで、脳動脈瘤(りゅう)の治療をはじめ、詰まってしまった脳血管の血流も再開できるという。今後、脳の疾患がどこまで治療できるようになるのか、脳血管内治療に大きな期待がかかっている。
 
▽塞栓と血行再建
 日本の死因の第3位を占める脳血管疾患。脳梗塞(こうそく)や脳出血、くも膜下出血などだが、こうした多くの疾患も血管にカテーテルを入れて治療できるかもしれないという。
「この治療法は大きく分けて2つある。1つは血管の異常な部分に物を詰めてしまう方法、血管の中を栓でふさぐので塞栓(そくせん)術と呼ばれる。もう一つはこれとは逆で、狭くなったり詰まってしまった血管の流れを良くする血行再建術」と相澤病院(長野県松本市)脳血管内治療センターの長島久センター長は説明する。
 血管内治療は、足の付け根の血管から脳血管の奥までカテーテルを入れて行う。塞栓術は細い金属製のコイルや樹脂の粉末、液体状の接着剤を使って、異常血管部分を詰めてしまう。一方、血行再建術は、カテーテルを通して血栓溶解剤を入れて血栓を溶かしたり、狭い部分を押し広げて血液の流れを良くする。
 塞栓術は、血管の一部が風船のように膨らんで破裂する「くも膜下出血」の原因になる動脈瘤や、動静脈奇形、脳や顔面の腫瘍(しゅよう)、外傷に伴う太い血管の損傷などが対象。血行再建術は、心臓でできた血栓が脳に飛んで詰まる脳塞栓症や脳動脈硬化症などが対象だ。
 
▽4時間後に回復
 同センターで脳塞栓症と診断された60代後半の男性のケースでは、突然、右半身の片まひが起こり、失語症に陥った。30分後に病院に収容。診断の結果、脳の左中大動脈が閉塞していることが分かり、カテーテルを使って血栓溶解剤を注入した結果、発症から4時間で血行が再開した。
「まだ、すべての病気を治療できるわけではないが、見つかった脳動脈瘤に安全に白金のコイルを詰め、破裂を防止する技術が確立してから飛躍的に広がったように、ほかの病気でも利用される可能性が強い」と長島センター長。
 同センターは、脳血管内治療を専門とする日本で数少ない施設として2001年10月に開設。日本脳神経血管内治療学会の指導医を務める長島センター長のほか、脳神経外科の2人の医師、放射線技師がいる。これまでに脳動脈瘤や脳静脈奇形、脳塞栓症など80例以上の症例をこなしている。特に脳塞栓症など血行再建が必要になる病気は、春先など季節の変わり目に多くなる傾向があり要注意という。

▽早期治療
 同学会が実施した全国アンケートによると、脳塞栓の発症から治療終了まで「大体6時間以内に治療を終了することが望ましい」と回答しているところが多く、脳細胞が血液不足で死んでしまう前に詰まりを取り除けば、塞栓症で起こる脳梗塞が軽くて済む可能性が高い。
 長島センター長は「脳血管内治療は、外科的な開頭手術に比べると患者に対する肉体的な負担が少なく、この治療法に注目する施設が増えているようだ。ただ、脳血管内治療は新しい分野だけにまだ専門医が少ない。指導医は全国に56人だけだし、専門医も157人にすぎない。専門医をどう養成していくかが今後の課題になる」と話している。

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