やけど治療に好成績
人工皮膚の臨床研究
実用化に期待高まる

 人間の皮膚の細胞を培養して作った人工皮膚が、厚生労働省の再生医療ミレニアムプロジェクトによる臨床研究で、重症のやけどや治りにくい皮膚病などに対して大きな治療効果があることが分かった。再生医療の中でも最も実用化に近い技術の一つとして期待されている。

 

  ▽相乗効果
 人工皮膚は北里大医療衛生学部黒柳能光 教授が開発した「培養真皮」。医学的な理由で切除した小児の皮膚の提供を受け、その真皮層から採取した線維芽細胞を培養、コラーゲンとヒアルロン酸で作ったスポンジシートに染み込ませて作った。
 他人の細胞で作られているため、最終的には拒絶されるが、それまでの間、血管内皮成長因子(VEGF)や塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)など、血管の新生を促す成分を分泌する。
 さらにヒアルロン酸とコラーゲンのシート自体も、傷の周辺から患者の健康な細胞を引き寄せる働きをする相乗効果があるといい、黒柳教授は「材料自体が傷を治す力を持っているのが、ほかの人工皮膚と違う点だ」と強調する。

▽2年間保存可能
 患者自身の細胞で作る人工皮膚もあるが、培養に3―4週間かかるため、緊急性の高いやけどなどには対応できない。同大人工皮膚研究開発センターは、10センチ四方の培養真皮を年間2千枚供給できる態勢を整えた。この真皮は2年間、凍結保存が可能だという。
 治療対象は重いやけどや高齢者に多い難治性皮膚かいよう、腫瘍(しゅよう)を切除した後の傷の手当てなど。傷を培養真皮で覆ったり、網状に広げて移植した本人の皮膚の上にかぶせたりして使う。
 培養真皮は徐々に分解、吸収されるので、週に一度、新たなものを張り付ける。感染に細心の注意を払うのは従来の皮膚移植と同じだ。
 2000年から5年間の期限で始まった臨床研究では、北海道大や九州大の皮膚科など、全国30の医療機関と提携して、計404症例を実施。このうち48%が皮膚かいよう、22%がやけどだった。
 実施施設による試験結果の検証では、63%の症例で「極めて有用」、30%で「有用」と高い評価を受けた。

▽企業化も視野
 

 臨床研究に参加した和歌山県立医大皮膚科の山本有紀医師は「今では、どんな治療をしても治らないかいようの患者さんにとって最後の手段となっている」と話す。
 山本医師によると、右足の先端部に縦7センチ、横12センチのかいようができ、従来の方法では足の切断が避けられないと判断した60代の男性のケースでは、12回の培養真皮の使用と本人の皮膚の移植を併用し、3カ月後には完全に傷がふさがった。
 「やけどの患者さんでは手術の回数が従来の半分程度で済むため、体への負担も減る」(同医師)という。ミレニアムプロジェクトとしての臨床研究は昨年3月に終了したが、全国14施設では培養真皮による新たな臨床研究を続けている。
 ただ培養真皮は、材料費だけで一枚当たり約2万円かかる。実際に医療現場で広く使われるようになるには、高額な費用を賄う仕組みが必要になりそうだ。
 黒柳教授は「あと4、5年かけて症例を重ね、医療現場や患者の理解を深めたい。国の認可を得る条件が整えば、企業化するなどして普及させたい」と話している。


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