透明度高い角膜を再生
フィブリンシートで培養
東京歯大が臨床研究

 傷ついた角膜の表面に、膜状に培養した角膜上皮細胞を移植する再生医療の研究と臨床応用が、各地で進んでいる。培養には、胎児を覆っていた羊膜を帝王切開での出産時に採取し、培養シートとして使うことが多いが、東京歯科大市川総合病院(千葉県市川市)は生体成分をもとにした「フィブリンシート」を使うことで、より透明度が高い細胞膜を作ることに成功。今月から臨床研究を始めた。

  2ミリ四方
 角膜は上皮、実質、内皮の3層構造。このうち上皮のもとになる幹細胞を採取、培養し角膜に移植するのが「培養角膜上皮移植」だ。薬の副作用で炎症が起きるスティーブンス・ジョンソン症候群や、外傷、化学物質などで傷んだ角膜の治療に行われる。
 角膜移植までのつなぎにする場合もある。「強い炎症があると、いきなり角膜を移植しても生着しない。まず上皮移植で、角膜表面の環境を整える必要があるのです」と、開発チームの島崎潤教授(眼科)は説明する。
 幹細胞は、黒目と白目の境に多く存在しており、約2ミリ四方の組織を採取する。一番いいのは本人の健康な方の目だが、親族や、死後に提供された角膜からも採取できる。通常はまぶたで保護される目の上部から取り、2―3日、目がゴロゴロする程度で、悪影響はないという。


▽分解酵素

 採取した組織をバラバラにして、培養液を入れた直径約2センチ、高さ約1センチの円筒形容器の中で培養。2週間で、フィブリンシートの上に直径約2センチ、厚さ0.05ミリ程度の薄い細胞膜ができる。  このシートは、血液中に含まれるタンパク質のフィブリンから作られ、手術の際の組織接着などに広く使われている。羊膜のシートの上で培養した場合はシートごと移植するのが一般的だが、フィブリンシートを使うと細胞だけの膜を作れる。  「細胞が出すタンパク質分解酵素の働きを抑える物質を、培養の途中までは加え、最終段階で添加をやめると、シートが溶けて細胞膜だけが残る」(島崎教授)仕組み。  膜は上皮細胞だけでできているため、透明度は高い。羊膜シートのように角膜に縫い付ける必要はなく、張り付けるだけで済むのも特長だ。  



▽バックアップ
島崎教授らは、効果が期待できる患者を対象に経過を見ながら臨床研究を慎重に進め、応用を目指す。  幹細胞を1回採取すれば細胞膜を6枚作れるが、臨床研究では幹細胞の半分は羊膜シートで培養する。万一、フィブリンシートが細菌汚染されたりした場合に備えるのだ。  こうしたバックアップができるのも、もともと同病院が国内で最も早く羊膜シートを使った手法を確立し、これまでに百数十例を実施、角膜移植も日本一多い年間約3百例を手がけている実績があるためだ。  「症状や経過に応じて、培養シートの種類を変えるほか、口の中の粘膜上皮から細胞膜を作ったり、角膜移植したりと、さまざまな選択ができる」と島崎教授。  やけどで目の周囲に引きつれがあり、まぶたを閉じられない人などは、まず同病院の皮膚科・形成外科で治療、培養に使う羊膜は産婦人科が提供、と病院内の連携も進んでいる。  角膜の再生医療で実現しているのは現在、上皮のみ。島崎教授は「実質や内皮の再生にも取り組みたい」と意欲を見せている。


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