エイズ感染急増の恐れ
クラミジア大流行が背景に

 
 エイズウイルス(HIV)の国内の新たな感染者と患者が昨年、初めて年間1000人を超えた。先進国で感染者、患者が増え続けているのは日本だけという異常事態に、専門家らは「若者の性感染症への警戒心が低く、無防備、無責任な性交渉が多すぎる。このままでは近い将来、中国などからHIV感染の波が押し寄せてくる」と警告している。

  ▽1万人に迫る感染者
 厚生労働省エイズ動向委員会が1月末に発表した速報値によると、2004年に国内で新たに報告された感染者は748人、患者は366人で計1114人。年間の感染者、患者数としては過去最多で、累計では9784人と1万人に迫っている。
 「エイズは特殊な病気ではなく、性感染症と認識することが必要だ」
 昨年末、東京で開かれた日本性感染症学会のシンポジウムで熊本悦明(くまもと・よしあき)札幌医大名誉教授は、このように強調し「既に起こっている性器クラミジア感染症の大流行の波に乗ってHIVが広がる恐れがある」と警告した。
 熊本名誉教授によると、1999年に全国の大学病院に出産のため入院した妊婦の調査で既婚者の7・6%にクラミジア感染が見つかった。旭川医大の調査でも性経験のある高校生の11・4%が感染しており、「まさに生活環境汚染的な状況」という。
 クラミジアは抗生物質で治るが、症状が出ないことが多く、本人が気が付かないまま感染を広げる恐れが大きい。性器の粘膜が荒れるため同じ経路で広がるHIVにも感染しやすくなる。
   
 ▽若者の意識に直接働きかけ
 「中国には既に100万人のHIV患者、感染者がいるとされ、2010年には1000万―2000万人に増加するとの予測もある」と熊本名誉教授。「中国とは人的交流が盛んなため、このままでは日本に流行の波が押し寄せても何ら不思議でない」と危機感を強めている。
 では性感染症の拡大を防ぐにはどうしたらよいのだろうか。前橋市で産婦人科クリニックを開く家坂清子(いえさか・きよこ)医師は「若者の意識に直接働きかけることが重要」と述べ、「あなたの町の、あなたの仲間たちの性感染症の感染率はこうです」と高校生に身近なデータを示し、コンドームの正しい使い方を教えた例を紹介。
 筑波大の野々山未希子(ののやま・みきこ)講師は「性交の開始年齢が小学校にまで低下している事実がどれだけ認識されているだろうか」と疑問を投げかけ、「無防備、無責任な性交渉を防ぐには、子供たちだけではなく、子供を教育しない親を教育することも必要だ」と強調している。



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