誤診多い眼瞼けいれん
悪化すれば事実上失明も
ボツリヌス毒が治療効果

  脳内の情報伝達の不調のため、まぶたをきちんと開け閉めできなくなる「眼瞼(がんけん)けいれん」。目に常に違和感を覚え、意志に反して急に目が閉じたりするため日常生活に支障を来すようになるが、自覚症状が一見似ているドライアイなどと誤診されることが多い。専門医は「周囲の無理解苦しむ患者が多い。正しい知識の普及と、適切な診断、治療が必要だ」と訴えている。  
 ▽診断つかず病院転々
 「目は普段、何も意識することなく使っている。ところが眼瞼けいれんになるといつも目が不快で、まぶしさや乾燥感、異物感などを感じるようになり、四六時中、目を意識するようになる」
 1000人以上の眼瞼けいれん患者が通院している井上眼科病院(東京都千代田区)の若倉雅登(わかくら・まさと)院長はこのように述べ、正しく診断されていない患者も含めれば「恐らく10万人を超える患者がいる、決して珍しくない病気だ」とみている。  「『けいれん』という病名から目のあたりがピクピクする病気だと医師にも誤解されているが、実際にはよほど重症にならないとピクピクとはせず、軽症患者は外見では異常が分からない」
 患者の訴えは「まぶしい」「目を開いていられない、つぶっていた方が楽」「目が乾く」など多様。ドライアイの症状とよく似ているため、ドライアイの治療を受けて全く改善しないまま眼科や精神科などを転々とするケースが非常に多いという。

 ▽半数が電柱に衝突
 若倉院長によると「眼瞼けいれんの患者にはドライアイでは決して見られない行動上の支障がしばしば見られる」。
 患者54人に歩行中のトラブルを尋ねたところ半数の27人が「電柱や物に衝突したことがある」と回答。「人込みで人にぶつかる」や「階段が怖い」と答えた患者も約40%おり、「支障ない」と答えたのはわずか9%しかいなかった。
 自動車の運転についても「危険を感じた」が64%、「運転をやめた」32%、「事故を起こした」も7%あった。
 眼科医が誤診するほどだから、職場などでの理解も得られにくい。急に目を閉じたりするため「わざとやっている」「サボっているのではないか」などと言われることさえあるという。
 重症化すると1日中ほとんどまぶたが開かなくなり事実上の失明状態になるが、「目を開ければ見える」ため視覚障害の認定も受けられない。

 ▽ボツリヌス毒が効果
 40歳以上で発症することが多く、女性患者が男性の約2倍。詳しい原因は分かっていないが、まぶたが閉じるのは目の回りの眼輪筋という筋肉が過度に収縮するためで、眼輪筋を制御する脳内の“スイッチ”に相当する部分に何らかの不調が生じているらしい。
 最近は若い患者が増えており、「日本では抗不安剤や睡眠導入剤を飲んでいる人が非常に多く、これらが原因となっている可能性がある」と若倉院長。シンナー、ガソリン、アリよけの薬剤などの化学物質も関係している可能性があるという。
 根治療法は見つかっておらず、症状を抑えるにはボツリヌス菌の毒素からつくった製剤を注射して眼輪筋を弛緩(しかん)させる方法が一般的。最近はしわ取りなど美容分野での利用に関心が高まっているが、眼瞼けいれん治療では1996年に国内承認され、97年から使えるようになった。治療の3,4日後から効果が表れ、3カ月程度持続する。
 笑った時の表情がぎこちなくなるなどの副作用が見られることがあるが、患者の約7割は治療に満足するという。



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