|
新薬開発や遺伝子診断 |
![]() 視力障害や運動障害などの症状が寛解と再発を繰り返す多発性硬化症(MS)。原因不明で根治療法も確立していない難病だが、新しい薬剤や治療法の研究が進み、症状はかなりコントロールできるようになってきた。このほど患者団体と医師、研究者らによる合同の「多発性硬化症フォーラム」が東京で開催され、最新の研究成果が患者らに紹介された。 多発性硬化症は、脳や脊髄(せきずい)の神経細胞を結ぶ細長い軸索のさやに炎症が起きることで発症する。炎症が起きるとさやの一部がはがれ落ちて神経細胞間で情報がうまく伝わらなくなり、炎症の個所に応じてさまざまな症状が出る。 ▽患者数は約1万人 国内の患者数は約1万人で女性の割合が多い。だが、1人1人の症状が違うため診断が難しく、1950年代まで国内に患者はいないとされていた。今でも「原因が分からないまま、いろいろな病院、診療科を訪れる患者が多い」と順天堂医院脳神経内科の横山和正(よこやま・かずまさ)医師。診断がつくのが遅く、正しく診断されないケースも一部にあるという。 しかし、ここ20年ほどの間に研究が大幅に進歩し、発症の仕組みなどはかなり分かってきた。 多発性硬化症は、脳を攻撃する悪いリンパ球と、それを抑える良いリンパ球のせめぎ合いで起きるらしい。 国立精神・神経センター神経研究所免疫治療部の山村隆(やまむら・たかし)部長らは良いリンパ球を活性化するOCHという糖脂質を発見し、マウスの実験で症状改善効果を確認した。世界的にも新薬開発が進んでおり「今、国内では再発予防にインターフェロンしか使えないが、複数の薬の中から患者ごとに最適なものを選べるようになるだろう」という。 ▽将来は難病でなくなるか DNAチップで血液を調べれば多発性硬化症であるかどうか簡単に分かるようになる時代も遠くなさそう。「患者と健康な人では遺伝子レベルでかなり差があることも分かってきた」と山村部長。患者の中でインターフェロンが効くグループと効かないグループに遺伝子レベルの差があることも明らかになった。 このような遺伝子診断が実用化すれば、インターフェロン治療が効くかどうかが事前に分かるようになるなど、患者ごとに病態や体質に合った治療法を使い分けられるようになる。患者の長期予後の改善や、薬の副作用の軽減なども期待できるらしい。 「将来的には多発性硬化症は難病ではなくなるかもしれない」と山村隆部長は話している。 |