降圧剤が心臓病に効果
新たな役割に注目集まる

 血管を収縮させて血圧を上げる作用を持つ「アンジオテンシンⅡ」という体内の生理活性物質が、心臓病悪化の元凶になっているらしいことが最近の大規模臨床試験で判明し、血圧を下げるために使われる降圧剤が、新たな心臓病治療薬として注目を集めている。
▽死亡率25%減少
 アンジオテンシンⅡをつくれなくしたり、働けないようにした薬剤は、血圧降下作用が期待できることから、現在、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシンⅡ受容体ブロッカー(ARB)が新しい降圧剤として注目を集め急速に普及している。
 大規模臨床試験は、VALIANTと名付けられ、米国や南米、欧州などの24カ国が参加して実施された。
 18歳以上の心不全または左室機能低下を伴う急性心筋梗塞(こうそく)患者にこれらの降圧剤を与える試験を実施。発症後12時間以上10日以内の患者1万4703人を①ACE阻害薬だけ②ARBだけ③2つを併用―の3つの群に分け、経過を観察した。
 昨年(2003年)11月発表のデータでは、3群ともほぼ同じ効果を示し、心筋梗塞後の死亡率が従来のデータに比べ、約25%減少していることが分かった。
 なぜ、アンジオテンシンⅡの働きを阻害することで、急性の心臓病の悪化を減らすことができるのだろうか。
 心臓病は糖尿病や高脂血症、高血圧などの危険因子があるとなりやすい。病状の進行パターンは、動脈硬化と心臓の左室肥大から心筋梗塞になり、さらに悪化し左室拡張、うっ血性心不全、末期の心不全、そして死に至る。これらの進行のそれぞれの過程にアンジオテンシンⅡが深くかかわっているらしいのだ。
▽副作用少ないARB
 小室一成・千葉大大学院教授(循環病態医科学)によると、この試験で3群とも同じ効果が見られたところから、悪化にアンジオテンシンⅡがかかわっていることは間違いなく、しかも両剤ともに心筋梗塞の再発や心不全発症の予防効果も見られるという。
 高血圧の治療薬として特に注目を集めているのがARB。ACE阻害薬は、せきなどの副作用が見られるのに対してARBは副作用が少ない。このためACE阻害薬は大規模試験でも途中で投薬を中止するケースが多かった。「使いやすさの面でARBが勝っており、高血圧の治療薬として急速に使用量が増えている。日本でも急性の心臓病の治療薬として使う日が来るのは間違いない」と小室教授は話している。
 

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