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シメチジンに意外な効果 大腸がんの生存率アップ |
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長年使用されてきた胃薬に、がんの転移を防ぐ作用があるらしいことが分かってきた。シメチジンという胃潰瘍(かいよう)や胃炎などの治療薬だ。 その仕組み解明に取り組んでいる藤田保健衛生大坂文種(ばんぶんたね)報徳会病院(名古屋市)の松本純夫院長(外科学)は「大腸がんで転移抑制効果があることが分かってきたが、他のがんでも転移を抑制している可能性がある」と指摘している。 ▽不思議な効果 ![]() シメチジンは世界初のH2受容体拮抗(きっこう)薬(H2ブロッカー)として1975年に登場し、以来30年も効果と安全性に優れた治療薬として日常臨床で使われ、市販されるようにもなった。そのシメチジンには、胃薬としての作用のほかにさまざまな効果があることが知られている。 「この薬をのんでいると、帯状疱疹(ほうしん)のひどい痛みも少なくなるし、皮膚がんの一種メラノーマの転移も少ない。胃がんの予後も良いというような不思議な効果が知られていた」と松本院長。 そこで、注目したのが大腸がんとの関係だ。原発性大腸がんの患者64人を、手術後2週間から1年間、シメチジンと抗がん剤(5FU)を投与した群と5FUだけを投与した群をほぼ半々に分け、10年生存率を比較すると、予想外の結果が浮かび上がってきた。 ▽転移を半分以下に シメチジン投与群では10年生存率が84・6%だったのに対し、抗がん剤だけの群は49・8%と大きな差が見られ、シメチジンの効果があることが判明。転移の発生数で見ても、シメチジン投与群34人では7人で計8カ所だったが、抗がん剤単独群は30人中16人計23カ所で、シメチジン投与により転移が半分以下に抑えられていた。 さらに大腸がんの進行度の目安になるリンパ節転移で比べてみた。 リンパ節転移を伴わないケースでは、10年生存率はシメチジン投与群90・5%、抗がん剤単独群69・5%で、あまり差は見られなかった。 ところが、リンパ節転移のあるケースの同生存率は、シメチジン投与群84・6%に対し、抗がん剤単独群では23・1%。このことは、転移を伴うケースの方が、シメチジンの効果が大きかったことを示していた。 「これは、シメチジンにがんの転移抑制効果があることを示しており、がん接着分子のEセレクチンの働きを妨害し、それががん転移を抑制している」と同院長。 転移は、血液中に入ったがん細胞が血管の内皮細胞上に現れる接着分子のEセレクチンと結合し、血管壁から組織内に入り込むことで起こる。 同院長らは、Eセレクチンによって大腸がんの細胞が血管内皮に接着するが、血管内皮にシメチジンを加えておくと、接着しにくくなることを実験で確かめた。 ▽新タイプの治療薬 ![]() Eセレクチンと関連するのは大腸がんばかりではない。前立腺がんや胃がん、肺がん、乳がんなどでも、この接着分子に結合する糖鎖(シアリルルイスX、またはシアリルルイスA)が発現している可能性が強い。このような結合ができているケースは、シメチジンの効果を期待できるということになりそうだ。 松本院長は「シアリルルイスのXかAが発現しているかどうかを調べれば、シメチジンが効くかどうかが分かる。がん細胞を攻撃するのが抗がん剤だが、シメチジンで転移を抑制しただけで、生存率が向上する。新タイプのがん治療薬になりそうだ」と強調している。 大腸がんに対するシメチジンの効果を検証するため、東北大や自治医大、京都府立医大、広島大など全国の34施設が2年がかりで臨床試験を実施するという。 |