局所療法と切除は同等
小型肝がんの治療成績
ラジオ波など日常的に

 肝がんの治療法として、電極針を患部に差し込み、ラジオ波やマイクロ波などを使って、がんを壊死(えし)させる内科的な局所療法が日常的に行われるようになってきた。最近は生存率など、予後に関するデータの蓄積も進み、手術による切除と比べても同等の成績が得れることが明らかになってきた。
 ▽生存率に差なし
「直径2cm以下の肝がんで、単発、肝機能の状態がよいなら、局所療法と切除とは長期生存率は変わらない。なるべくなら体に負担の少ない局所療法を勧めたい」と 近畿大医学部の工藤正俊教授(消化器内科)は話す。
 普通、がん治療の基本は、ほとんど外科手術ができるかどうかの一点にかかっており、それが予後の良さを表している。ところが、肝がんは進行度だけでは治療方針が決まらないという。
 「肝がんでは、肝機能の予備機能を考慮する必要があり、通常のがんの常識が通用しない。例えば、直径1センチの小さながんでも、肝硬変を持つ肝臓の真ん中にあれば、開腹して切除することはしない」(同教授)
 このため、肝がん治療では、手術で切除する方法のほか、早期に発見し、内科的な方法で効果的にがんを取り除く局所療法が発達してきた。
 ▽8000例を比較
 局所療法には、1980年代に始まったエタノール注入療法をはじめ、高周波を用いて、がんを“熱死”させるマイクロ波凝固療法とラジオ波熱凝固療法の3つあり、最も新しいラジオ波は99年に導入され、現在、4年分のデータがある。
 03年10月に大阪で開かれた日本肝臓学会のワークショップ「肝がんに対する局所療法の長期予後-肝切除との比較」では、近畿大病院や大阪赤十字病院、九州医療センターなど全国11の施設が約8600例のデータを持ち寄り、局所療法と切除の成績を比較、検討した。
 その結果、小型のがんで単発、直径2cm以下の場合、1施設で局所療法の方が切除より良いと出たが、ほかはすべて差はなし。直径2-3cmでは、2施設で切除が上回るとしたが、ほかは差はなかった。
 座長を務めた工藤教授は「続いて開かれた会合で、学会として、直径2cm以下、単発の小型肝がんでは、切除と局所療法に生存率で差はないという『推奨』を行うことで合意できた」と話す。
 ▽再発抑制が大事
 外科の立場からは「局所療法は根治的でない」と反論する人もいる。  切除では周りを一緒に切り取ってしまうのに対し、局所療法は取り残しや局所再発という不確実性が残るという指摘だ。
「現在の局所療法、特にラジオ波療法では2cm以下のがんの場合、取り残しはまずない。今回大事な点は、直径2cm以下の小型肝がんでは、生命予後の点で局所療法と切除に差がないことが示されたこと」と同教授。
 肝がんで問題なのは再発が多い点だ。肝硬変がある限り、年率5-7%でがんが発症するが、1度がんができた後は再発率は年15%に達するため、実際には再発の繰り返しが多い。再発では、ほとんど局所療法になる。
 「このため、1回目の治療法をどうするかを気にすることはあまり実際的でない。それよりも、再発を抑えるために炎症をコントロールし、肝炎ウイルスを消すこと。さらに再発の場合、いかに早く見つけて、再度根治的に治療するか-ということの方が大事」と工藤教授。
 「小型肝がんの治療法については、医師は今回の合意に基づいて患者さんに十分説明し、納得してもらった上で、手術か局所療法かを選んでもらうことになる」と話している。
 

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