新技術駆使し治療成績向上
術中MRIや覚醒下手術
痛み軽減、治療難しい脳腫瘍で


 原発性脳腫瘍(しゅよう)の約3割を占める神経膠腫神経膠腫(こうしゅ)。手術による摘出が治療の基本だが、悪性度が高いほど正常な組織に入り込み、きれいに摘出するのは難しい。東京女子医大脳神経外科は「術中MRI(磁気共鳴画像装置)」や「覚醒下(かくせいか)手術」などのさまざまな新技術を組み合わせて高い摘出率を実現、生存率の大幅な向上につなげている。

 取り残しを少なく

 手術で腫瘍のそばにある神経線維に触れると、運動や言語などの機能に障害を起こす恐れがある。同外科の丸山隆志(まるやま・たかし)医師によると「従来はぎりぎりまで摘出せず、取り残した部分に放射線照射や抗がん剤治療を行うことが多かった」という。
 だが1990年ごろから、事前に撮ったMRI画像と手術の様子をコンピューター画面で重ね合わせるナビゲーション技術が広まり「自分がどこを手術しているのか、術中に正確につかめるようになった」(同医師)。
 それに伴い正常細胞との境界近くまで切除できるようになり、腫瘍の摘出率も徐々に向上。取り残しが少ないほど治療成績が格段に良くなるというデータが出てきた。
 脳は豆腐のように軟らかく、頭蓋(ずがい)骨を外すとわずかだが動くため、手術前のMRI画像と手術中の脳にはずれが生じる。「脳はわずかでも傷つけたら機能がだめになる」(同医師)だけに、腫瘍摘出率をさらに上げるには、より高精度の撮影が必要になってきた。
 
術中に機能検査

 頭蓋骨を外した後に撮影できる術中MRIは、そのような要望に応える新しい技術 の一つだ。
 同外科が導入したのは2000年春。永久磁石を使う開放型のMRIで、通常の筒型のものと異なり見通しが良く、手術中の使用に適している。磁場の強さは通常のMRIの3分の1程度で、患者を少し動かせば磁場が弱まるため、通常の手術器具も使える。
 術中MRIと組み合わせるのが、言語機能を調べる覚醒下手術。手術中に患者を目覚めさせて言語機能を調べる。脳の言語野の近くに腫瘍がある場合に行われる。
 腫瘍か正常細胞かの判断が難しい部分に電気刺激を与えながら、患者に言葉を発してもらう。患者の言葉が止まれば言語野なので切除しない。
 手術中に麻酔を弱める必要があるが「局所麻酔をしており、脳に痛覚はないので痛みは感じない」と丸山医師。「怖い手術と思うかもしれないが、言語領野のぎりぎりまで摘出するために最も確実な方法。手術前に患者とよく話し合い、同意を得られた患者に対してだけ実施する」という。

標準治療法へ

 同外科はこのほか、術中に運動機能を継続的に調べる「モニタリング」や、特殊な薬を使い、紫外線を当てると腫瘍が蛍光を発する「術中蛍光診断」にも取り組み、平均約94%と全摘出に近い摘出率を実現している。
 悪性度が最悪で、5年生存率が10%未満にとどまるグレード4の神経膠腫は、この手術法でも治療は難しい。だが中間的な悪性度のグレード3では摘出率が生存率に大きく影響。同外科での5年生存率はまだ出ていないが、従来の約20%を大幅に上回る60―70%に達する見通しだという。
 丸山医師は「術中MRIは今後必ず普及するはず。そうすると、ぎりぎりの領域を摘出することになるので今度は覚醒下手術などの技術が必要になる。そういう施設が増えて5年生存率が向上すれば、それが標準治療法になっていくと思う」と話している。


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