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医療新世紀
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2017.09.19

ブレーキ壊れる前に行動を
「減酒」助ける外来開設
依存症治療に変化

 お酒を飲み始めたら止められないアルコール依存症は、ブレーキの壊れた車にも例えられる。その治療は長らく「断酒」だけだったが、深刻な問題が生じる前の段階で医療が関わり、酒量を減らす「減酒」に導こうとの取り組みが動き始めた。うまくいけば飲酒者の健康度を上げるのに役立ちそうだが、問題がないのに自分の飲酒行動に疑問を抱くのは難しい。誰もが無縁とは言えない依存症。時には「自分は大丈夫?」と振り返りたい。

 ▽初めて開設

 神奈川県横須賀市にある国立病院機構久里浜医療センターは4月、飲酒量を減らすための治療や指導を行う国内初の「減酒外来」を開設した。
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 担当の湯本洋介医師(精神科)によると、8月末までに受診したのは約30人。断酒に踏み切れなかった軽症のアルコール依存症患者のほか、「飲酒後記憶がなくなった」「家族に暴言を吐いてしまった」などのトラブルに悩む依存症の"予備軍"とも言える人々が、県外からも訪れる。

 依存症治療の基本は酒を断つことだ。しかし「断酒を強要されるイメージが問題飲酒者をアルコール外来から遠ざけている面はある」と湯本さん。

 近年は、軽度な依存症や予備軍の人々には減酒でも効果があるとの考え方が主に欧米で出ており、治療方法の有力な選択肢として注目されつつあることも減酒外来開設の背景にある。治療には公的医療保険が適用されるため、窓口負担は1回当たり数千円程度という。

 ▽目標を確認

 まず、受診者の飲酒の問題を判定するテスト「AUDIT」を行う。さらに依存症かどうかや、重症度をみるテストも行い、減酒で対応可能な段階なのかを確かめる。

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 その上で、飲酒量や休肝日の頻度といった目標を患者自身が決め、「飲酒日記」を毎日付ける。1~2カ月ごとに受診して、目標の達成度を確認する流れだ。

 AUDITは10問で40点満点。点数が1桁なら「危険の少ない飲酒」だが、10点台になると危険度が上がり、20点を超えるとアルコール依存症の疑いが強くなるという。

 湯本さんによると、減酒外来を訪れる人は20~30点台が中心だが、10点台の人もいる。「15点以上の人は国内に300万人とも言われています。欧米では減酒がかなり広まりましたが、日本では本当にこれからです」

 ▽課題は否認

 大阪府東大阪市で長年、アルコール依存症治療に携わってきた「東布施辻本クリニック」の辻本士郎院長によると、最も手ごわいのは患者の「否認」。依存症であることを患者自身が受け入れようとしないことだ。

 クリニックに通う患者らは「依存症と最初に言われたときはショックだった」と口をそろえる。「自分は依存症と違う」と否認を続けて重症化。仕事を失い、家族を失い、犯罪に手を染めてしまった人も。一日中飲み続ける「連続飲酒」に陥り、数カ月~数年の記憶がないという例もあった。

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 「重症患者でも、『自分は酒が好きなだけ』と否認する。慢性疾患と同じで、患者本人が納得して治療を受けないとうまくいかない」と辻本さん。予備軍や軽症の人はなおさら、自分の飲酒に問題があると認めるのは容易ではないという。

 日本では、男性はアルコール量で1日平均20グラムまでが「適度な飲酒」。ビール500ミリリットル、日本酒1合程度が目安だ。

 辻本さんは「アルコール依存症は誰でもかかる可能性がある病気。ブレーキが壊れる前に手を打てば、病気にならずに済む。トラブルがあるのに『酒の上のこと』と安易に済まさず、自分をよく見つめてほしい」と訴える。

(共同通信 鎮目宰司)