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2017.08.15

在宅患者の情報を共有
名大開発の電子@連絡帳
多職種で素早く対応

 人は病気にかかると病院に行き、時には入院し、回復して退院して、自宅から通院する。障害が残ったり病気が慢性化したりすれば、医師だけでなく、訪問による看護や介護、福祉の手当ても必要になり、医師のほか医療、介護の専門職や行政職などが患者の状態の変化に迅速に対応することが求められる。名古屋大が開発した情報共有システム「電子@連絡帳」は、そんな場面で役立つ情報共有ツールだ。活用の現場を取材した。
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 ▽退院後を見守る

 電子@連絡帳は名古屋大先端医療・臨床研究支援センターの水野正明教授が開発した。

 「患者の治療は病院で完結しない。地域連携が不可欠です」と水野さん。脳神経外科医として多くの手術に携わった水野さんは、患者の退院後がいつも気にかかっていたという。連携には多職種が相互に情報を伝え合うことが大切だと考えたのが、ツールの開発を始めたきっかけだ。

 当初は、広いエリアをカバーする大きなシステムを構想したが、地域ごとに行政の計画や関係者の意欲、人的資源の条件などが大きく異なり、情報端末の操作に不慣れな関係者もいて、うまくいかない。方針を変え、人口5万~10万人を対象に関係者千人程度で利用する方式を採用した。

 ▽機能は追加可

 まず、システムへの情報提供と関係者の情報共有について同意を得た患者を登録。その患者の医療、介護、福祉に関わる人がグループを構成し、メンバーと、各自が利用するタブレットやパソコンなどの端末を限定して情報を保護する。グループメンバーと、各自が登録した端末に限ってサーバーの患者情報にアクセス、書き込みが可能。症状が軽ければ医療関係のみの少人数で、重い人なら介護や福祉の関係者も交えた大人数でグループを構成し、随時増員することもできる。

 システム導入時は最低限の基本機能を動かし、必要に応じて機能を追加できる。融通が利く使い勝手の良い仕組みをつくったことで、東海地方を中心に普及が加速。愛知県では54市町村のうち既に46市町村で利用中。現在はIT大手の「インターネットイニシアティブ(IIJ)」(東京)が名大から技術情報の提供を受け、システムの普及と運営に当たっている。

 ▽顔の見える関係

 実際の現場でどう使っているのか。愛知県豊橋市にある田代ひ尿器科の山内智之院長は、2011年から電子@連絡帳の利用を始め、次のような経験があるという。

 ある日、訪問介護スタッフから独居で下半身が不自由な患者について「緊急・患者さんのおできが化膿しています」との情報がメンバーに届いた。患部の写真も添付され、軽症ではない。直ちに「明日までに往診できます」と返信。その夜、患者宅を訪ねて患部を処置し、その場で結果を連絡帳に書き込んだ。その際、訪問看護師にはガーゼ交換を、薬剤師には薬の服用の確認を指示。翌日には、看護師、薬剤師から指示通りに対応したとの報告が返信された。

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 連絡帳がない頃も電話やファクスで必要な情報はやりとりしていたが「比べものにならないほどスムーズで、対応も素早くなった」と山内さんは話す。

 ただ、システムを導入するだけでうまくいくわけではない。山内さんは「まず医師が多職種連携の必要性を認め、自分の患者の登録を進めて参加者を増やすことが先決」と指摘。水野さんは「連絡帳はあくまでツール。それを生かすには、連携する関係者同士が顔の見える関係を築いて対応することだ」と強調した。

(共同通信 由藤庸二郎)