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医療新世紀
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2017.08.01

自分取り戻す「居場所」に
がん患者いつでも迎える
マギーズ東京

 がんを告知されたが医師に何を聞けばいい? 治療以外のことは誰に相談しようか―。さまざまな悩みを抱えるがん患者や家族がいつでも立ち寄り、相談できる場として昨年10月「マギーズ東京」(東京都江東区)が誕生した。スタッフが目指すのは「医学に詳しい友人」のような存在。多い日は10人以上が来るという相談室を訪ねた。

 ▽予約不要、無料
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 「夫のがんが転移していて、主治医が手術はできないと...」。6月のある日。中国地方から来たという50代前後の女性が、大きな木製のテーブルに着くなり泣き崩れた。

 センター長の秋山正子さん(67)が話を聞いていくと「検査数値が悪く、すぐには手術できない」という主治医の説明と、夫の死を直結させて混乱しているようだった。秋山さんが整理して「治療できないのではなく、今は休養が先決ということでは」と話すと、女性は明るい表情になった。

 マギーズは、乳がんを患った英国人マギー・ジェンクスさん(故人)が「がんに関わる全ての人が利用できる施設を」と呼び掛けて1996年に生まれた。世界約20カ所に広がり、造園家だったマギーさんの意向で、どの施設も緑豊かで開放的な設計だ。予約不要、無料で、看護師や臨床心理士が迎えてくれる。

 訪問看護師の秋山さんは、相談相手がなく途方に暮れる多くのがん患者を見てきた。どう支えるかを模索する中で英国のマギーズを視察。スタッフが友人のように寄り添う姿を見て「病院からも家からも一時離れ、自分自身を取り戻せるこんな居場所が患者には必要」と実感した。

 ▽答えを見つける

 秋山さんが「日本にもマギーズを」と本格的に動き始めたのは2014年。20代で乳がんを経験し、患者支援活動をしていたテレビ局記者の鈴木美穂さん(33)と意気投合し、インターネットで出資を募るクラウドファンディングなど資金集めに奔走、設立にこぎ着けた。運営費は全て寄付で賄っている。

 病気、家族、これからの生き方。マギーズのドアをたたく人の悩みは多様だ。常勤スタッフの看護師、岩城典子さん(45)は、泣いて駆け込んできた女性患者が忘れられない。「一緒に治そう」と言っていた婚約者が、両親の反対で破談を告げてきたといい、2時間ほど話して帰っていった。

 「最後は『丸ごと受け止めてくれない人とは幸せになれませんよね』と整理がついたようでした」と岩城さん。多くの相談者は、話すうちに自ら答えを見つける。スタッフは「私たちは背中を押すだけ」と口をそろえる。

 ▽院外だからこそ

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 国内では年間100万人余りが新たにがんと診断され、人生を左右する判断に直面する。全国のがん診療拠点病院には、治療や就労などの相談に応じる相談支援センターがあるが、秋山さんは「病院内でないからこそ話せることもある。中と外の両方に支える場所があることが大切」と話す。

 東京都江東区のがん研究会有明病院で年に約400人の新規乳がん患者を診る片岡明美・乳腺外科医長(47)は、患者にマギーズを訪ねてみたらと勧めている。病気を受け止め切れない様子だった患者も、マギーズで時間を過ごした後は落ち着くことが多いという。「いっぱいになってしまったその人の器を、一度空っぽにすることができるようです」と片岡さん。

 「地元にここのような患者支援の場を」と見学に訪れる医療関係者は多く、金沢市の「元ちゃんハウス」や京都市の「ともいき京都」など既に始動した所も。秋山さんは「2人に1人ががんになる時代。全国に普及させていきたい」と話している。

(共同通信 宮川さおり)