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2017.04.11

人や情報とつながる場所に
視覚障害者支援のフロア
神戸のアイセンター計画

 目の病気の研究治療から患者らの就労支援まで対応する全国初の施設「神戸アイセンター」の整備を神戸市が進めている。人工多能性幹細胞(iPS細胞)の臨床研究など最先端分野の拠点になるが、注目されるのは「ロービジョン」(低視力)と呼ばれる視覚障害がある人の生活をさまざまな角度から支援するフロアを設けることだ。「当事者同士や支援者が出会い、生活に必要な情報とつながる場所」にしたいという。

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▽残る機能最大に
 アイセンターは神戸市の人工島ポートアイランドで今年10月の開業を目指している。7階建てのビルに研究所や眼科病院が入り、iPS細胞による網膜治療の研究に取り組んでいる理化学研究所などが運営に携わる。

 ロービジョン支援のフロアは、センター2階の大半を占める約500平方メートルのスペースにできる。理研の高橋政代プロジェクトリーダーが理事を務める公益社団法人の「NEXT VISION」が設計、運営を担う。

 ロービジョンとは、全盲ではないが眼鏡などで矯正しても視力が十分に得られず、生活に不自由を感じている状態のこと。日本眼科医会の推計(2009年)によると、該当者は国内に約145万人。緑内障などが主原因で、高齢化でさらに増加が予想される。

 適切な訓練の実施や支援グッズの活用で、残った目の能力を最大限に生かすことができるが、目の病気をきっかけに家にこもりがちになる人もおり、適切なケアの情報を患者にどう届けるかが課題となっている。

 また、iPS細胞を活用した治療がうまくいっても、元通り見えるほどの回復はまだ難しい。そこで、ロービジョンの人をケアや社会につなぐ場として、このフロアが計画された。

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▽安全に体験
 フロアは多彩な構成が特徴。文字の拡大や音声読み上げが可能な本やパソコンで情報収集ができるコーナー、凸凹を付けた壁を登るボルダリングなどスポーツを楽しめる区画、視覚障害者にも作りやすいレシピで料理ができるキッチン、生活の不便を補うさまざまな支援グッズの使い心地を、学校や職場に似た環境で試せる場所などがある。

 設計に関わった眼科医で東京大先端科学技術研究センター特任研究員の三宅琢医師は「従来の施設は縦割りで、福祉だけ、教育だけと情報が限られていた。ここでは福祉、医療、教育、保険など生活に必要な情報を幅広く得られる。情報のバリアフリーです」と話す。

 設計に当たっては視覚障害者や支援者、さまざまな専門家から意見を募った。「いつでも気軽に訪ねられる」「何でも相談できる」といった要望が多かったという。

 フロアにはもう一つ特徴がある。現実の屋外環境のようにあえてあちこちに段差を作った。「誰かが見ていてくれるので、安全に段差を体験したり白杖を使う練習をしたりできる」と三宅医師。

▽自ら発信も
 病院の外来診療に訪れる人も含め、1日200人以上の利用を見込む。患者だけでなく家族や支援者も訪れ、「視覚障害と言っても全く見えないわけではない」「こういう形で声を掛けてもらったら助かる」といった気付きを共有し、交流してもらいたいという。

 視覚障害者支援の経験が豊富な理研の仲泊聡研究員(眼科医)は、情報収集以外に「自分はこうしたい、これができるといったことを視覚障害者が発信できる場にもなるのでは」と期待する。

 企業や福祉団体が日替わりでイベントを企画することもできる。「研究、医療、福祉、企業の間に壁がなく、社会への窓口になる」。高橋さんは太鼓判を押した。
(共同通信 岩村賢人)