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2017.03.21

幅広い世代に薬の知識を
賢い利用願い本出版
2薬剤師、地道な実践も

 軽度の不調は市販薬などにより自分でケアを―という「セルフメディケーション」の考え方を国が進めようとしている。だが、どうすれば薬を賢く利用できるか、基本的な知識の普及は不十分。それを何とかしたいと考えた2人の女性薬剤師が、幅広い世代向けに薬の正しい使い方の解説本をまとめた。出前授業など薬の教育ができる薬剤師の養成にも取り組み、「状況を少しずつでも改善したい」と話している。

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▽失敗がヒント
 本は「失敗から学ぶ薬を使う時の12のルール」(薬事日報社刊)。帝京大薬学部教授の斎藤百枝美さん(62)と東京薬科大客員教授、宮本法子さん(67)の共著。2人が見聞きした患者の失敗や誤解の実例をヒントに12話を構成し「なぜこんな失敗が?」の解説から、守るべきルールを示した。

 例えば、病院で降圧剤を処方された中年女性の話。「錠剤が大きくて飲みにくい」と、すり鉢で粉にして飲んだところ、ひどいめまいが起きて立てなくなってしまった。

 実はその薬は、体内で効果が長続きするよう特別な工夫が施された「徐放剤」。粉にしたため高濃度の有効成分が一気に体内に入り、血圧が下がり過ぎた―が種明かし。

 「薬の形には意味があるので割ったりかんだりせずコップ1杯の水で飲んでください。飲みにくいときは薬剤師に相談すれば対処法を考えてくれます」と宮本さん。

▽意気投合
 2人の出会いは2000年ごろのこと。

 福島県立医大病院の薬剤師だった斎藤さんは1990年代から、病院内学級の子ども向けに、薬の正しい使い方の教育を独自に実践していた。フランスで9~18歳にかけ3段階で体系的に行われる薬の教育を知ったのがきっかけだった。

 学会発表で斎藤さんの取り組みを聞いた宮本さんは、同じ北海道出身ということもあり意気投合。宮本さんは東京都内の小学校で、斎藤さんも06年に帝京大に移ってからは2人で協力し、出前授業を続けてきた。

▽「国民の役割」
 義務教育では12年度から中学生に薬の教育が始まった。しかし「それでは遅い」と考えた2人。15年に小学生向けの本「くすりを使う時の12の約束」を出版した。すると意外なことに大人から「もっと早く知りたかった」などの反響があったため、幅広い年齢層に向けた今回の本を企画した。

 斎藤さんは「今の大人は薬の教育を受けない状態でセルフメディケーションの実行を求められている。これはいけないと思ったんです」と話す。

 実際、旧薬事法の改正で14年に施行された医薬品医療機器法には、薬に関する知識と理解を深めることや適正使用が「国民の役割」として初めて規定されたが、一般にはほとんど知られていない。

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 2人は「教育できる薬剤師」育成も目指す。宮本さんが日本社会薬学会の会長だった15年、学会として薬の教育を広めることが総会で決議された。学会は昨年から、薬の適正使用を子どもに指導できる薬剤師の養成講座を開催。2人は講師として参加している。

 薬剤師数は14年末時点で28万8千人を超え、約30年前の2倍以上に。しかし、薬について教わる身近な専門家としての存在感はいまひとつ。宮本さんらはそんな現状の改善も期待する。

 安心して薬を使うために患者が積極的に薬剤師の力を借りようと呼び掛けている「ささえあい医療人権センターCOML」(大阪市)の山口育子理事長は今回の本について「身近でありがちな間違いが題材なので、多くの人に読んでほしい本」と評価。その上で「薬剤師にはどんな役割があるのかが強調されていればさらに良かった。出前授業などでの補足を期待します」と話している。
(共同通信 吉本明美)