47NEWS >  共同ニュース >  医療・健康  >  医療新世紀 >  前立腺がんの最新情報交換動きだした男性患者会経験談、治療の参考に
医療新世紀
がん
がん関連のニュースがご覧頂けます。
2017.01.31

前立腺がんの最新情報交換
動きだした男性患者会
経験談、治療の参考に

 がんの告知を受けてただでさえ混乱した頭で、専門的な話を理解し、比較するのは難しい。がんになったとき、頼りになるものの一つが治療を受けた経験談などを共有できる患者会だ。さまざまながんの患者会があるが、これまでは活動の中心を担うのは女性で、前立腺がんや精巣腫瘍のように男性特有のがんの患者会は少なかった。最近ようやく、男性による患者会活動が広がりを見せている。

170131honki1.jpg
▽ひげで啓発
 昨年12月、東京都立川市、昭島市にまたがる国営昭和記念公園でランニングとウオーキングのイベント「Mo(モー)フェスタ」が開かれた。男性のがんや病気の啓発イベントとしてオーストラリアで始まった催しの日本版。Moは英語のマスターシュ(口ひげ)に由来する。

 患者や家族、支援者ら参加者は、自前のひげをたくわえたり、付けひげをしたりして参加する。一斉に駆けだすのをうれしそうに見守っていたのが、兵庫県宝塚市の武内務さん(68)。主催団体の一つである前立腺がん患者会、NPO法人「腺友倶楽部」の理事長だ。

170131honki2.jpg
 武内さんは2004年、進行した前立腺がんと診断され、5年生存率2割と宣告を受けたという。海外サイトも含めインターネットで情報を探し、最新の放射線治療を見つけて治療を受け、今は小康を得ている。

▽まとまりにくさ
 「自分の専門分野に詳しい医師でも、全ての治療法に通じている人はいない。専門でない分野は詳しく説明してくれない」。武内さんはその痛切な経験から、自ら集めた情報を掲載するウェブサイト「腺友ネット」を開設。掲示板に問い合わせの書き込みをするなどして集まった人たちと、14年に会を設立した。

 全国的な前立腺がん患者会は初めてとみられるが、なぜ男性はまとまりにくいのか。武内さんは男性特有の傾向を感じている。

 「女性は2、3人でも話が弾み、すぐに動いて取りあえず会をつくり、行動を始める。男性は集まってもあまり話さず、先が見通せないと動きださない」という。

 積極的な会員勧誘をせず、自主的に情報を求める人を受け入れてきたが、会員は1年前の約120人から300人を超えるまでに増えた。

▽発言力に期待
 男性患者会をつくる意義はどこにあるのか。

 前立腺がん治療に長年携わるJCHO東京新宿メディカルセンターの赤倉功一郎・副院長(泌尿器科)は「社会的に発言していく力になる」と期待する。

 赤倉さんによると、新しい治療法や薬の承認、保険の適用などが患者団体の要望を受けて加速した例は数多い。普及啓発などで社会に対して患者が積極的に働き掛ける意味も大きいという。

 乳がんなどでは治療選択の助けになる患者向けガイドラインが作成されているが、ここには患者の意見が反映されている。赤倉さんは「患者会が客観的、中立的な立場から声を上げていくことが大切だ」と話した。

 ただ、注意が必要なのは、患者会で新しい情報を知ったり、ほかの患者の治療経験を伝え聞いたりしても、それが直ちに自分の治療の選択肢とはなり得ないこと。

 赤倉さんの経験では、それまでと違う治療法が受けられるかどうかを相談してくる患者の大半は、その治療法の適用から外れていた。赤倉さんは「病状やがんの性質などは患者ごとに千差万別。情報を理解した上で、最終的には、主治医とよく相談して決めるべきだ」と強調している。
(共同通信 由藤庸二郎)