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2017.01.24

増える乳房再建
地域格差など課題
経験伝える患者会も

 乳がんの手術で失った乳房を、人工乳房で再建する女性が増えている。日本人の胸の形に合った製品が3年前に保険適用となり、患者が選択しやすくなったためだ。だが乳房再建を手掛ける医療機関は大都市圏に偏在。治療や関係情報が誰にも身近になったとは言えない。そんな現状の改善を目指し、専門家や患者会が動いている。

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▽がん手術も変化
 乳がん患者は年々増加している。国立がん研究センターは2016年の発症者を9万人と推計。早く見つければ比較的治りやすいがんとはいえ、治療で胸が傷つきふくらみを失うことは、深刻な喪失体験になり得る。

 このため、部分切除手術と放射線を組み合わせる乳房温存療法でも全切除(全摘)と生存率が変わらないことが明らかになると、自分の乳房を残せる温存療法が主流となり「近年まで乳がん手術全体の約6割を占めていた」と日本乳癌学会理事長の中村清吾・昭和大乳腺外科教授は話す。

 全摘後に患者の腹部などの筋肉や脂肪を移植する、自家組織による乳房再建は保険適用されていたが、技術的に難しい手術でもあり、実施できる施設は限られていた。

 13年、シリコーン製の人工乳房を使う再建手術に初めて保険が適用され、翌14年に自然な胸の形に近い「しずく形」の人工乳房も保険の対象になると、状況は変わった。

 東京のがん研究会有明病院形成外科の沢泉雅之部長は「それまでの『乳房を残すか失うか』の選択から『残すか取って再建するか』の選択になった」と表現する。がん研をはじめ再建に積極的な施設では、温存療法と全摘手術の割合が逆転するほどになったという。

 「がんをしっかり取り除いた上で、見た目を犠牲にしない選択が可能になったということ」と中村さんは解説する。

▽7千人に迫る
 人工乳房を使う再建では、乳がんの手術時に「エキスパンダー」と呼ばれる風船状の器具を胸に挿入、約半年かけて生理食塩水を少しずつ注入し胸の皮膚を十分に伸ばしてから人工乳房に入れ替える方法が主流だ。

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 日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会の調べでは、エキスパンダーを入れ再建に着手した患者は13年は1281人。それが14年は4750人、15年5651人と増加。沢泉さんによると、17年には7千人に迫ると推定されている。

 だが、手術の多くは大都市圏、特に首都圏に集中しており、地域格差が大きいという。沢泉さんは「質の高いがん治療を全国で提供すべきなのと同様に、再建も全国で受けられるようにすべきだ」と強調し、医師の研修を積極的に受け入れる。

 一方日本乳癌学会は、学会の専門医が所属する全国の医療機関が、乳房再建を含むどんな診療を提供できるかを分かりやすく患者に示そうと、施設アンケートに着手した。「1施設ですべて対応するのは難しいが、他の施設と連携して地域の患者の再建ニーズに応える体制を整えたい」と理事長の中村さんは話す。

▽決める力に
 同じ患者の立場で乳房再建の自己決定を応援しようとの動きもある。

 乳がん体験者の会「KSHS」(キチンと手術・ホンネで再建の会、事務局東京)は、リアルな知識を得たい女性のために、先輩患者から再建の体験を聞き、再建した乳房に触れることもできる集まりを開いている。

 自身も再建した同会代表の溝口綾子さん(55)は「満足も不満も含め、体験者の本音を直接聞けたのが自分の意思決定の決め手になったから」と活動の動機を語る。

 NPO法人キャンサーネットジャパンも、再建者の体験談をインターネットで公開中だ。
(共同通信 吉本明美)