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医療新世紀
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2016.02.16

糖尿病の悪化、地域で防ぐ
透析にさせない取り組み
医師と保健師が連携

 糖尿病が進むと、自覚症状が乏しいまま糖尿病性腎症が悪化し、人工透析が必要な腎不全に至ることがある。本人の生活の質が大きく損なわれるほか、医療経済の面でも健康保険などに多額の負担が掛かる。埼玉県秩父地方の山間部にある人口1万人余りの皆野町 では透析への移行を防ぐため2013年から、医師と同町の保健師が連携し糖尿病の悪化を食い止める取り組みを進めている。

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▽減塩を重視
 「正月に練り物とソーセージと両方食べたら元に戻っちゃって...」。糖尿病性腎症を患う60代の女性は、自宅を訪ねてきた皆野町健康福祉課の保健師梅津順子さんに恥ずかしそうに言った。魚肉練り製品やソーセージは意外に塩分が多い。最近は腎臓に負担を掛けない減塩ができていたが、年明けの検査で医師に塩分過多と言われたという。

 事前に検査データや食事内容を知っていた梅津さんは、それらの塩分量を調べてきていた。女性が好きな漬物や煮物などと並べた表を示し「正月はしようがないね。1日にどれか一つがいいよ」と話し掛ける。「煮物のしょうゆは最後に入れて」「薬は先生の指示通りにね」。こたつの上の大きなマグカップと電気ポットも、十分に水分を取るようにと梅津さんが勧めたものだ。

 皆野町の取り組みはこうだ。医師が進行の早い糖尿病性腎症の患者を見つけると、放置したら透析になる可能性があると本人に伝え、保健師による訪問指導プログラムへの参加に同意を得る。

 同意した患者の検査データや治療方針、処方薬などは保健師が把握。医師と情報交換しながら生活指導を進める。塩分は取り過ぎると血圧を高めて腎症を悪化させるが、減塩によって改善もできるため、生活指導の中で特に重視される。

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▽新薬の助け
 この女性は自覚症状が深刻でないのに透析になりそうだと聞かされて驚き、参加に同意した。女性を含め、15年までに透析が必要になる恐れがあると診断されたプログラムへの参加者5人は、いずれも病状悪化を食い止められているという。

 皆野町で指導に当たる日本慢性疾患重症化予防学会代表理事で内科医の平井愛山氏によると、糖尿病性腎症の進行が早い患者を見つけるには、検査データのうち尿タンパクと、腎臓が老廃物を尿へ排出する能力を推定した「eGFR」という数値が重要。eGFRが一定以上のペースで下がり始めると、遠からず透析が必要になることが分かってきた。

 平井さんは「GLP1受容体作動薬」という新しい薬を積極的に導入した。この薬は血糖値を下げるインスリンの分泌を促すと同時に、血糖値を上げるグルカゴンの分泌を抑える自己注射薬。腎臓を守る働きもあり、インスリン分泌機能をある程度保っている患者に有効だ。

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▽味覚の問題
 ただ、指導をしても塩辛い物をやめられない患者では薬の効果も下がる。平井さんは味覚に問題ありと考え、濃度に差をつけた塩を染み込ませた紙をなめる検査方法を採用。普段、塩辛い味付けの食事を取っている人は通常の倍以上の濃度でしか塩気を感じないことがはっきりした。

 家族に料理を作ってもらう人はそれでも薄塩の食事が可能だった。自分で作る主婦や1人暮らしの人は、味覚のせいで減塩できないでいたのだ。薄味に変えた人は徐々に塩分を感じやすい味覚に戻ったという。

 医師も診察の際に糖尿病患者の生活指導をするが、細かい改善は保健師との連携があってこそ。梅津さんは「医師と保健師が同じ方針、目的で対応を考えるのが大切です」と話した。
(共同通信 由藤庸二郎)