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医療新世紀
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2015.03.10

歯周病防ぎ全身の健康維持
効果的な国産除菌技術
歯科医院に導入広がる


 歯周病は歯を失う最大の原因だ。しかし歯周病の怖さは、それだけではない。近年の研究で、歯周病を引き起こす細菌が動脈硬化や心臓病、糖尿病、がん、肺炎、早産や低体重児出産など、さまざまな病気に関与していることが分かってきた。歯周病を予防し全身の健康維持も図れないか。その方策として、個人個人の歯並びに合わせて作った器具で口の中を効果的に除菌する技術が開発され、歯科医の間に広がってきた。
 ▽バイオフィルム
 口の中にはもともと多くの種類の細菌がすみついている。通常は善玉菌が優位な状態にあるが、歯磨きなどの口腔ケアを怠ると、ミュータンス菌やジンジバリス菌といった悪玉菌が増えて口腔内の環境が悪化、虫歯や歯周病の発症を招く。
 問題は口の中だけにとどまらない。歯周病を放置すると、その原因菌が歯肉から血液中に入り込み、血流に乗って全身のあらゆる場所に運ばれてしまう。「歯原性菌血症」と呼ばれる状態で、動脈硬化など多くの病気の発症や悪化につながる恐れがある。
 こうした事態に陥らないためには、悪玉菌を取り除いて歯周病を防ぐのが最善の方法だろう。ところが、細菌の集団は「バイオフィルム」という強力な粘着質の膜を形成して歯の表面に固着しており、簡単には除去できない。薬剤を塗布してもバイオフィルムの内部には浸透できず、唾液ですぐに希釈されてしまうため効果を発揮するのに必要な濃度を保てない。
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 ▽精密な型取り
 そこで注目されるのが「3DS」と呼ばれる除菌の技術だ。3DSとは「デンタル・ドラッグ・デリバリー・システム」の略称で、歯科薬剤を狙った場所に確実に送り届けるという意味を持つ。花田信弘・鶴見大歯学部 教授(公衆衛生学)らが2000年に開発した。
 導入する歯科医院が全国で増えつつあり、鶴見大自体も13年4月、付属病院(横浜市)に除菌の専門外来を開設した。
 花田教授によると、3DSではまず患者の歯列を精密に型取りし、薬剤の受け皿となる樹脂製の「トレー」を作製する。
 機械的な清掃でバイオフィルムを可能な限り除去した後、トレーに抗菌剤や殺菌消毒剤などの薬剤を注入し、上下の歯に約5分間装着する。薬剤が十分な濃度で歯の表面にとどまるため、効果的に除菌できる。
 通院は原則5回。この間、患者の唾液に含まれる細菌の種類や数を随時確認しながら除菌を繰り返す。「悪玉菌が減ると歯の表面に善玉菌が定着します。善玉菌優位の状態にリセットすることが3DSの目的です」と花田教授は解説する。
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 ▽生活習慣に
 患者は通院終了後も自宅でトレーを使い、毎日1回5分を目安に除菌のセルフケアを続ける。
 3年前に除菌した横浜市の主婦Mさん(60)も自宅でのケアに励んでいる。10年ほど前には虫歯や歯周病に悩んでいたMさん。当時、夫に「口が臭い」と言われたことがショックで、再び歯周病にならないように注意している。「ついついケアを忘れてしまう日もあるけど、今も歯は良い状態が保たれています。気のせいかもしれませんが体調もいい」と話す。
 3DSには健康保険が使えないため、患者が10万円前後を自己負担しなければならない。それでも、歯を失ってインプラント手術を受ければ1本で数十万円掛かることを考えれば、必ずしも高いとは言えない。
 「すべての国民が自分専用のトレーを持ち、3DSが新しい生活習慣になれば、健康長寿が実現して医療費削減にも貢献できる。普及に努めたい」と花田教授は話している。(共同通信 赤坂達也)