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2015.02.17

早期発見で重症化防ぐ
長く付き合う心構えを
がん手術後のリンパ浮腫


 乳がんや子宮がんの手術などに伴う後遺症で、手や脚がむくむリンパ浮腫。早期発見と適切なケアで重症化を防げることが分かっているが、手術後何年もたってから発症する例もある。「がん治療後」の期間は長くなっており、リンパ浮腫とも長く付き合う心構えが大切になりそうだ。
 ▽排水管
 私たちの体内には、血液を循環させる血管のほかに、リンパ液を流すリンパ管が張り巡らされている。リンパ管は、毛細血管から細胞の隙間に漏れ出した水分やタンパク質などの老廃物を心臓へと運ぶ、一種の排水管だ。
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 リンパ管の要所要所にあるリンパ節という組織は、がんの広がり具合を知る手がかりとしても重視されているため、がんを手術で取り除く際、病巣近くのリンパ節が一緒に切除されることも少なくない。その結果、リンパ液の流れが滞って起きるのがリンパ浮腫。手術だけでなく放射線治療が原因になることもある。
 乳がんでは脇の下にあるリンパ節を切除するため腕がむくみ、子宮がん、卵巣がんなどでは骨盤内にあるリンパ節を取るので脚がむくむ。リンパ浮腫になるのはリンパ節を切除した人の2~3割程度とみられ、手術後1年以内の発症が多いが、10年以上たってから、過労やけがなどをきっかけに発症することもある。
 
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▽日常の注意
 東京でリンパ浮腫専門のクリニックを開業する広田彰男医師は「初期に日常生活に注意すれば進行は十分抑えられる」と話す。例えば体重が増えないよう減量を心がける、手術した側の手や脚への負担を避け、就寝時は枕などを使って心臓よりやや高めに保つなどだ。これらは症状が進んだ後も大切になる。
 生活上の注意以外の治療の柱は①皮膚の手入れ②正しいマッサージ③圧迫療法④圧迫した状態での運動。けがや虫さされで皮膚に炎症が起きると、リンパ浮腫の発症や悪化のきっかけになるため、皮膚を健康な状態に保つことは重要だ。
 「マッサージについては誤解されやすいので注意が必要」と言うのは、がん治療後のリハビリに詳しい辻哲也・慶応大准教授(リハビリテーション医学)。リンパ浮腫のマッサージは皮膚の表面を手のひらでなでるように行う。筋肉をもみほぐすような強いマッサージとは全く異なる。「誤ったマッサージで症状が悪化した例もある。専門的な研修を受けた医療者が対応する施設を確認してほしい」と辻さんは話す。
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 国立がん研究センター が運営するインターネットサイト「がん情報サービス」でそうした施設を検索できる。しかし「空白県」もある上、他の病院でがん治療を受けた患者は対象外という施設もあるので普及が課題になっている。
 手や脚を包むように圧迫してむくみを防ぐのが圧迫療法で、圧迫した状態での運動も推奨される。これに使うストッキングなど弾性着衣の一部には、購入に健康保険が適用される。
 ▽変化も
 2009年にリンパ浮腫治療室を開設したがん研究会有明病院 (東京)婦人科の宇津木久仁子副部長によると、不必要なリンパ節切除はなるべく避ける方向に、がん医療も変化してきたという。
 乳がんでは、がん細胞が最初に転移するとみられるリンパ節の検査法が進歩したため、リンパ節の切除はかなり削減された。一方、子宮や卵巣のがんでそれを突き止めることは難しい。「それでも生存率などに影響がない限り、手術は縮小しようという意識は高まりつつある」と宇津木さんは話している。(共同通信 吉本明美)