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2014.12.16

希少な肺がんに薬を
1%の患者探し治験
全国180超施設が協力


 肺がん全体の中で1%程度とみられる希少な遺伝子異常を伴う患者を探し出し、効果が期待される新薬の臨床試験(治験)につなげるという全国規模のプロジェクトを国立がん研究センターが進めている。がんの特性に合った「個別化治療」を目指す取り組みだが、最大の課題は患者の発生頻度の低さ。だが、希少な遺伝子異常をターゲットにする新薬は今後増えると予想され、そのモデルケースになると注目されている。
 ▽分子標的薬
 この遺伝子異常は「RET融合遺伝子」と呼ばれ、RETという遺伝子が別の遺伝子とくっついてできる。これが肺がんの多くを占める腺がんの1~2%に見つかり、がんの増殖に強く関与していることを日本など複数のチームが2012年に報告した。
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さらに、海外で承認済みの甲状腺がん治療薬バンデタニブにRET融合遺伝子の働きを妨げる作用があり、この遺伝子異常がある肺がんの治療に有効である可能性も併せて示された。
 「日本発の重要な発見。ぜひ日本の患者さんに最初に薬を届けたい」との考えがスタートだったと、プロジェクト責任者の後藤功一・国立がん研究センター東病院 呼吸器内科長は振り返る。
 バンデタニブのように、特定の遺伝子異常をターゲットにがんの増殖を止める薬を「分子標的薬」という。過去に肺がんでは、比較的頻度が高い「EGFR」などの遺伝子異常が見つかっており、それに対する薬の有効性が確認されている。
 ▽スクリーニング
 RET融合遺伝子も新たな治療のターゲットになると注目されたが、問題は対象者の少なさだ。後藤さんによると、近年、肺がんで幾つもの遺伝子異常が見つかったが、いずれも頻度は1~数%と低く、基礎研究で効果がありそうな物質が見つかっても、薬として国の承認を得るために不可欠な治験を実施するのは難しかった。
 だが、厚生労働省の人口動態統計によれば、13年の肺がんによる死者は約7万3千人おり、その1%なら約730人。「それだけの人に効く可能性があるなら」と、後藤さんらは肺がん診療に当たる全国の医療機関に対象患者を選び出すスクリーニングに協力してもらい、バンデタニブの医師主導治験につなげるプロジェクトを計画した。
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 対象は進行した肺がんで、がん細胞に「EGFR」の遺伝子異常がない成人患者。RET融合遺伝子があれば治験に参加できる可能性がある。
 治験を実施するのは同センターなど計7カ所の専門機関だけだが、スクリーニング参加施設は、プロジェクトを開始した昨年2月時点の58施設から、今年10月末には183カ所に増え、所在地も全都道府県に広がった。
 治験には最終的に患者17人を登録する予定で、10月末時点で14人まで登録が進んだ。後藤さんによると、来年3月には治験が終了し、その後約1年の追跡期間を経て結果が見えてくるという。
 ▽試金石
 これほど少人数の治験の場合、どのような結果が出れば「有効なので治療薬として使える」と言えるのか明確な基準はない。対象者がもう少し多ければ、標準治療との比較試験を行うことも可能だが、RET融合遺伝子の肺がんの場合は難しいとみられる。
 「日本を含め、まだどの国の規制当局も明確な答えを持っていない。だが、肺がんに限らず、希少な遺伝子異常をターゲットにした分子標的薬は増えてくる。私たちの治験が重要な試金石になるのは間違いない」と後藤さんは話している。(共同通信 吉本明美)