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医療新世紀
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2014.09.16

スポーツ脳振とうを防げ
軽視は危険、競技中止を
死亡や後遺症招く恐れ


 スポーツにはけがが付きまとう。特に危険なのは頭部へのダメージだ。脳に衝撃が加わって起きる脳振とうは、かつては「よくあること」と軽く見られがちだったが、実は死亡や重い後遺症につながることがあり、最近は防止策に取り組む競技団体が増えてきた。万が一起こしてしまった場合は直ちに競技への参加を中止するなど、適切な対応が求められる。
 ▽間接的衝撃も
 「プレーは続けていたが、正直なところ、その後のことはよく覚えていない」。都内の会社員Aさんは大学1年だった5年前、アメリカンフットボールの試合で脳振とうを起こした。相手選手にタックルした際、あおむけに倒れて後頭部をぶつけた。頭がボーッとして痛い。試合終了後、気分が悪くなり吐いた。20140916honki1.gif
 その日、自宅近くの病院で「脳振とうだろう。しばらく安静にすれば回復する」と言われた。ポジションを失いたくなくて2日後に練習に戻ったが、いつまでたっても頭は重いままだった。
 約2週間後、東邦大医療センター大橋病院 (東京)の脳神経外科を受診し、磁気共鳴画像装置(MRI)検査や脳機能評価の結果から「症状はまだ続いている」と診断された。完全復帰まで、さらに2週間を要した。
 脳振とうは、頭部への衝撃で脳が揺さぶられて起こる一時的な脳機能障害。頭を直接ぶつけなくても、首や肩、体幹が受けた強い衝撃が脳に伝われば起こる恐れがある。
 ▽意識消失の誤解
 症状は頭痛やめまい、ふらつき、吐き気、健忘など実に多彩だ。多くの場合、症状は7~10日程度で治まるが、数週間以上持続することもある。
 また、脳振とうと言えば意識消失のイメージが強いが、実際には9割以上のケースは意識を失っていない。それが落とし穴にもなる。
20140916honki2.gif 「本人も周囲も脳振とうであることを認識しなかったり、軽く考えたりしてしまう。そのまま競技を続けると脳振とうを何度も繰り返し、致命的な脳損傷を招くことがある。特に怖いのは急性硬膜下血腫だ」とAさんの主治医だった中山晴雄講師は解説する。
 急性硬膜下血腫は、頭蓋骨の内側にある硬膜と脳とをつないでいる「架橋静脈」が、脳が揺れた時に切れて出血、血の塊が脳を圧迫する。若年者でも約半数は死亡し、助かっても重い後遺症を抱えることが少なくない。
 また、脳振とうの繰り返しは、将来のうつや認知機能障害のリスクを高めると報告されている。
 ▽どんな競技でも
 医療機関では詳細な問診に加え、コンピューター断層撮影(CT)やMRI検査などを行って診断する。特に治療法はないため「肉体的、精神的な休息を十分に取り、経時変化を見ることが大切」と中山さんは話す。
 国内で脳振とうが注目されたのは柔道事故がきっかけ。名古屋大 大学院の内田良准教授(教育社会学)によると、1983~2013年度に中学・高校で起きた柔道事故で死亡した生徒は118人。うち76人が急性硬膜下血腫などの頭部外傷だった。ラグビーでも、同期間に頭部外傷23人を含む59人が亡くなった。
 柔道やラグビー、アメフットのような激しい接触や衝突を伴う競技ばかりではない。内田さんは「どんな競技でも起こり得ると、指導者は認識してほしい」と話す。
 日本脳神経外科学会は昨年12月、脳損傷を予防するための提言を発表した。「脳振とうを起こしたら、直ちに競技・練習への参加を停止する」「復帰は症状が完全に消失してから徐々に行う」「脳損傷や硬膜下血腫を生じたときは競技に復帰するべきではない」―。命を守るために、正しい知識が欠かせない。(共同通信 赤坂達也)