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2014.02.18

保険者と組み重症化予防
糖尿病で大学発ベンチャー
看護師らが個別指導


 重症化すると腎不全から人工透析に進む恐れがある糖尿病。患者本人の負担に加え医療費も高い透析への移行を、食事や運動などの個別指導で食い止めようという事業を、広島大発のベンチャー企業が展開している。顧客は個々の患者ではなく、健康保険組合などの「保険者」や、社員の健康増進を目指す企業だ。糖尿病以外にも適用は可能といい、疾病管理の新しいスタイルとして関心を集めている。
 ▽国保で実績
 この企業はDPPヘルスパートナーズ (広島市)。 20140218honki.jpg看護師が積極的に関わる慢性疾患管理プログラムを開発してきた森山美知子広島大教授(成人看護開発学)らが、その普及のため2010年に設立した。
 注目されたのが、人口約24万人の広島県呉市と共同で10年度から始めた重症化予防事業。呉市は高齢化率が高く、1人当たりの医療費も全国平均より2割以上高い。1人年間約600万円の医療費が掛かる透析を減らせれば、当事者も、市が運営する国民健康保険(国保)の財政も助かる。
 そこで国保のレセプト(診療報酬明細書)と特定健診データから、透析予備軍の糖尿病患者を抽出。プログラム参加に同意した人に対し、DPPの看護師らが主治医と連携して半年間、食事や運動、血糖管理などを面接や電話できめ細かく指導した。
 12年度までに参加した計192人のうち、プログラムを終了した168人からの透析移行はゼロ。初年度参加40人の詳しい分析では、血糖値は改善し腎機能も維持されていた。呉市保険年金課は「プログラム参加者が抽出者の2割程度と少ないのが課題。さらに改善していきたい」と話す。
 ▽健康経営
 呉市に続き、多くの周辺自治体が糖尿病の重症化予防事業をDPPに委託した。
 一方、会社が進める「健康経営」の実現手段の一つとしてDPPの力を借りる企業もある。電線大手フジクラ(東京)は「社員の健康が競争力の基盤」との経営理念に基づき、従来は会社の総務部門、健保組合、個々の社員が別々に持っていた健診や健康に関するデータを1カ所に集めて分析し、予防に生かす取り組みを12年から始めた。森山さんの指導で糖尿病や心血管疾患の重症化リスクが高い人を抽出し、希望者にDPPプログラムに参加してもらった。
 健康経営推進室の浅野健一郎副室長によると、保健指導で心臓疾患のリスクが高いとして早期受診を勧められた40代の社員が、実際に心臓の不調に気付いて専門医を受診、後遺症なく回復した例があった。「保健指導で自分のリスクを学んでいたのが役立った。その後の生活習慣の改善にもつながっている」という。
20140218kao.jpg ▽データヘルス
 DPPは昨年5月、東京にも事務所を開設。すると10を超す大手企業の健保組合から「試してみたい」と重症化予防事業の申し込みが相次いだ。
 関心の高さの一因になっているのが、厚生労働省が進めようとしている「データヘルス計画」。保険者がレセプトや健診データの内容を分析して、加入者の健康づくりや重症化予防に活用するよう促す政策で、医療費の支払いが中心になっていた保険者に役割の見直しを迫るものだ。厚労省によると、まずは大企業の健保組合が14年度に具体的な計画を策定し、15年度からの事業開始が求められる。
 森山さんは「慢性疾患の管理には、長期にわたって患者の状況を把握できる並走者が必要で、保険者がその役割を果たすのは理にかなっている。私たちも主治医と連携して患者を支援できる看護師の専門性を生かし、さらに実績を挙げたい」と話している。(共同通信 吉本明美)