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医療新世紀
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2014.02.12

切れた神経の再生促進
純国産の誘導チューブ
知覚回復8割超


 外傷などで切れてしまった末梢神経の欠損部分を橋渡しするようにつなぎ、神経の再生を促進する「神経再生誘導チューブ」が治療現場に広がり始めた。日本の企業が開発し、昨年3月、世界に先駆けて国内で承認、7月から保険適用になった純国産の医療材料だ。手や指の神経損傷を対象とした臨床試験(治験)では、80%を超える患者で知覚機能が回復。運動神経の再生や、がんの手術で切除した神経の再生など、幅広い用途への応用も期待されている。
 ▽手のひら切断
 それは一瞬の出来事だった。埼玉県の会社員Aさん(49)は2010年3月、工場で金属用の電動のこぎりを操作中、誤って左の手のひらから先を切断してしまった。
 救急車とドクターヘリで都内の病院に運ばれ、接合手術を受けた。指は失わずに済んだものの、引きちぎられた親指の神経だけは欠損部分が長いため接合できず、知覚が完全にまひした。 20140212kao.jpg体の他の部分から採取した神経を移植する「自家移植手術」も受けたが、症状は改善しなかった。
 昨年7月、四谷メディカルキューブ (東京都千代田区)の「手の外科」で、待ち望んでいた神経再生誘導チューブの手術を受けた。2本の神経の欠損部分に、それぞれ長さ45ミリのチューブを装着した。あれから半年、Aさんは「親指に少しずつ感覚が戻ってきました」と話す。主治医で手の外科・マイクロサージャリーセンター長の平瀬雄一医師は「術後1年ほどで親指全体の知覚が回復するはず」と予測する。
 ▽従来品の欠点
 神経再生誘導チューブは製品名「ナーブリッジ」。東洋紡 (大阪市)が開発した。 20140212honki.jpg手術用の縫合糸にも使われている生分解性の樹脂「ポリグリコール酸」の管の中に、日本ハム (同)が供給する高品質の医療用コラーゲンを充塡してある。
 神経の欠損部分にチューブを挿入し、その両端に断裂した神経の端をそれぞれ縫合固定する。するとチューブ内を中枢側から末梢側に向かって神経が伸びていき、やがて1本の神経として修復される。チューブ自体は数カ月で分解し、体内に吸収されてしまう。
 実はこれまでも神経再生を目的としたチューブはあった。しかし治療成績が期待したほどでなく普及していない。「従来品は管の内部が中空のため体の中でつぶれてしまう。ナーブリッジはコラーゲンの充塡により神経の伸びるスペースが保たれ、成績が飛躍的に良くなった」(平瀬さん)。 20140212honki1.gif全国20施設が参加した治験では、82・8%の症例で知覚が改善した。
 ▽広がる応用
 傷ついた神経を放置すると、まひが固定化してしまうだけでなく「複合性局所疼痛(とうつう)症候群」という激しい痛みを発症することがある。このため神経を修復する治療が必要になる。現在は自家神経移植や、切れた神経の端と端を顕微鏡下で直接縫い合わせる「神経縫合」が主に行われている。
 しかし欠損が大きい場合、短くなった神経を無理に引っ張って縫合すると、治らずに知覚異常や痛みが残ることがある。一方の自家移植も患者自身の体から健常な神経を採取しなければならないため、採取部に傷が残ったり、痛みやしびれが現れたりする欠点がある。ナーブリッジはこうした問題を解決できる。
 「昨年7月からの半年間に全国で100例以上の手術が行われました。大半は手足や顔面の手術ですが、腹部や胸部もある。(脳や脊髄以外の)末梢神経であれば、知覚神経でも運動神経でも部位を問わず使えるので、治療の幅を大きく広げる可能性があります」と平瀬さんは期待している。(共同通信 赤坂達也)