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医療新世紀
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2013.12.10

アルコール依存症に新薬
脳に作用し欲求抑える
断酒率向上に期待


 アルコール依存症は、酒の飲み方を自分でコントロールできなくなる精神疾患だ。よくないと分かっていても飲み続け、心身だけでなく、家庭や職場、地域の人間関係まで壊してしまう。治療には生涯にわたる断酒が必要だが、いつでもどこでも簡単に酒が手に入る日本で、誘惑に打ち勝つのはとても難しい。今年5月、脳に作用して飲酒の欲求自体を抑え込む「断酒補助薬」が登場した。国内では約30年ぶりの新薬で、断酒率の向上が期待されている。
 ▽離脱症状
 「酒に強いことが美徳とされたり、飲まないやつはつまらないと言われたり。日本は、飲めない人が苦労するぐらい飲酒を促進する社会です。ところがアルコール依存症になると、意志が弱いなどと非難されて社会から排除される。病気として認識されていない点に一番の問題があります」
 アルコールをはじめとする依存性薬物問題に取り組むNPO法人「ASK(アスク)」 の今成知美代表はこう指摘する。
20131210honki.gif 習慣的な飲酒はアルコールへの耐性を生む。徐々に酒量が増え、いくら飲んでも酔った感じがしなくなり、アルコールに病的な欲求を持つ「精神依存」と呼ばれる状態になる。やがて数時間おきに酒を飲む「連続飲酒」という症状が現れ、体内のアルコールが切れると手の震えや多汗、睡眠障害、吐き気、幻聴、幻視などの離脱(禁断)症状が出るようになる。今度は不快な離脱症状を止めようと酒を飲み、ますます悪循環に陥っていく。
 ▽患者80万人
 害はこれにとどまらない。肝臓や膵臓の障害、脳の萎縮など影響は全身に及び、自殺や飲酒運転による事故、家庭内暴力などの原因にもなる。
 国内の推計患者数は約80万人に上るが、治療を受けているのは年間わずか4万人程度。中年男性に多い病気だが、近年は高齢者や女性も増えているという。特に女性は、飲酒開始から5~10年程度と、男性の10~20年に比べて短期間で発症するため注意が必要だ。
 治療の原則は断酒の徹底。国内におけるアルコール依存症治療の中心的存在である国立病院機構久里浜医療センター (神奈川県横須賀市)の樋口進院長によると、治療は四つのステップを踏む。
 まず、患者に病気であることを自覚させる。断酒を開始し、離脱症状や合併症の治療を行う。心身の健康が多少回復したら、精神療法や自助グループへの参加などの「心理社会的治療」を前・後期の2段階で実施する。中心はあくまでも心理社会的治療で、治療中、治療後の飲酒を防ぐ方策として薬物療法を行う。
 ▽画期的な薬
 従来は「抗酒薬」と呼ばれるタイプの薬が用いられてきた。肝臓で作用し、服用後に酒を飲むと激しい動悸や吐き気、頭痛、血圧低下などの症状が起きる。恐怖心を植え付けて酒から遠ざける。20131210honki1.gif
 一方、新薬は脳に働き掛け、神経のバランスを回復させて欲求自体を抑える。海外では既に24カ国で使われており、厚生労働省が医療上必要性の高い薬として開発要請。今年5月、日本新薬 (京都)が「レグテクト」の製品名で発売した。
 患者327人を対象とした国内臨床試験では、心理社会的治療と並行して2錠ずつ1日3回、24週間連続投与した結果、47・2%が完全に断酒。プラセボ(偽薬)を投与したグループの36%に比べて明らかに断酒率が高かった。副作用として下痢が多くみられたが、整腸剤で対処できる程度のものだったという。
 「断酒率向上の起爆剤となる画期的な治療薬です。今後は臨床データを蓄積し、より有効で安全な使い方を確立したい」と樋口さんは話している。(共同通信 赤坂達也)