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医療新世紀
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2013.10.15

がんサバイバー急増時代
パンク寸前の専門病院
必要な取り組みとは

 がんと診断された人、治療中の人、さらに治療を終えた人までを含めて「がんサバイバー」と呼ぶ。そのサバイバーが急増し、専門病院はパンク寸前だという。急速な高齢化に伴ってがんにかかる人が増える一方、診断や治療の進歩で、がんが"不治の病"から長く付き合う慢性病に変わってきたためだ。サバイバーが安心して暮らすために何が必要か。神奈川県立がんセンター 名誉総長も務める小林理・同県予防医学協会 がん予防医療部長に聞いた。
 ―日本のがんサバイバーの現状は。
20131015honki.gif 「厚生労働省研究班は2002年度の報告で、当時のがんサバイバーを298万人と推計し、それが15年には533万人に達すると予測しました。国民の20人に1人がサバイバーという時代は目前です」
 ―要因の一つは診断や治療技術の進歩か。
 「高齢化など年齢構成の変化の影響を取り除いてはじき出した『年齢調整死亡率』は近年、低下傾向にあります。これは治療成績の着実な改善を示しています」
 ―一口にサバイバーというが、置かれた状況はさまざまだ。
 「大きく三つのステージに分けられます。第1ステージは診断時から初期の治療が終わるまで。治療方針を決めるための検査や、治癒を目指した積極的な治療が行われます。第2ステージは初期の治療が終了して、専門的な定期検査が必要な段階です。がんと共生しなければならない人や再発の可能性がある人、追加治療や補助治療が必要な人など、いろいろな人が混在しています」
 ―従来のがん医療やサポート体制は、このあたりまでが対象だった。
 「私自身も以前は、ここまでしか関心がなかった。しかし、これはサバイバーとしての人生のほんの一部にすぎません。がんが治癒した後の第3ステージが今後は大きな問題になります。がんは治っても、がんから完全に自由にはなれません。例えば乳がんの手術で乳房を失うなど、がんを克服した代償としての後遺症に悩んだり、治療に関連して発生する二次がんのチェックが生涯必要になったりします」
 ―現在のがん医療の体制で第3ステージのサバイバーに対応できるか。
 「サバイバーの多くは治療を受けた専門病院以外の医師にかかることに強いストレスを感じ、同じ病院に通い続けます。しかし専門病院では、生存率の向上で治療中の患者さんが増えている。現在、化学療法は外来が中心ですが、どの専門病院も抗がん剤投与のためのベッドを倍々で増やしています。20131015kao.jpgこんな状況で第3ステージのサバイバーを頻繁に診察すると、新たな患者さんに対応できない。パンク寸前です」
 ―対策は。
 「経過観察や簡単な投薬のみのサバイバーは近隣医療機関に任せ、専門病院は高度な治療や定期検査の必要なサバイバーに力を注ぐ役割分担が必要です。国もがん対策推進基本計画で、地域での医療連携推進をうたっています。ただ、実際はなかなか進んでいません」
 ―サバイバーの不安を解消する方策は。
 「サバイバーシップケアプラン(SCP)という米国で提唱された手法が日本でも導入されつつあります。治療終了後、将来どんなことが起きるのか、何に注意すべきかを患者さんごとに示し、精神的、肉体的、社会的な問題などについてケアをします。SCPの推進はサバイバーの生活の質を向上させ、がん克服後の長い人生を支えます」
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 こばやし・おさむ 1947年東京生まれ。東邦大医学部卒。81年神奈川県立がんセンター。2010年同総長。今年3月に退任し現職。専門は消化器外科。(共同通信 赤坂達也)