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2013.02.12

サーファーズイヤーが増加
耳内で骨隆起、痛みや難聴
ダイビングやサウナでも

20130212kao.jpgサーフィンをする人たちの間で「サーファーズイヤー」と呼ばれる耳の異常が増加している。冷たい水や風に長期間さらされた結果、外耳道をふさぐように骨が隆起、進行すると慢性的な痛みや難聴に悩まされることもある。専門に研究している宮崎大医学部耳鼻咽喉・頭頸部外科の中西悠医師(36)に治療や予防について聞いた。
▽深刻な影響
 十数年前に来日し、宮崎市に住むニュージーランド出身の英語教師ダンカン・バットランドさん(42)の趣味はサーフィンだ。気候が温暖で波の質が良い宮崎はサーフィンのメッカ。冬場も含め一年を通じて楽しむ。
 バットランドさんは約10年前、耳に入った水が抜けにくくなった。その後、繰り返し外耳道炎が起きるようになり、生徒の発音が聞き取れないことも。痛みと難聴、ストレスは生活や仕事に深刻な影響を及ぼした。
 2009年、中西医師の診断を受け、両耳とも外側から鼓膜がほとんど見えないほど骨の隆起が進行した重度のサーファーズイヤーと判明した。

▽6割に形成
20130212kao1.jpg 研究の歴史は浅い。中西医師によると、かつては職業潜水士らに多くみられることが知られていたが、1970年代に海外でサーファーに頻発していることが分かり、本格的な研究が始まった。
 日本では「外耳道外骨腫」とも呼ばれるが、認知度は低い。中西医師は「手術をする基準や方法など対応は医療機関でまちまちだ」と話す。
 近年、中西医師の元には全国各地から診察に訪れる人が増えている。中西医師は07年から約3年間、宮崎県内で開かれた5回のサーフィン大会で出場者や観客計373人の耳を検診。程度の差はあったが223人(約60%)にサーファーズイヤーが形成されていた。うち157人はプロではない一般のサーファーだった。
 中西医師によると、初期はほとんどの人が無症状。耳の穴をふさぐように骨の隆起が進むと、耳に入った水や耳あかを出しづらくなり、炎症などが起きる。隆起は自然に消滅することはない。
 不明な点も多い。そもそもなぜ骨が隆起するのか、解明されていない。長年サーフィンをしていてもまったく異常がない人もいる。ダイビングやカヌーが趣味の人、冷たい水に入る習慣があるサウナの愛好者らに起こることもあるという。

20130212honki.jpg▽予防は耳栓
 根本的な治療法は手術しかないとされる。中西医師の場合、全身麻酔をかけ、耳の穴の中で医療用ドリルやノミなどを使い隆起した骨を少しずつ削り取る。外耳道付近は顔面神経があり、鼓膜も近いため、高度な技術と集中力が必要だが、傷口が小さく体への負担が少ないという。このほか耳の後ろを広く切開する方法もある。
 中西医師の手術を受けたバットランドさんは数日で退院、数週間後には耳栓をしてサーフィンを再開した。その後は一度も症状は出ていない。
 中西医師が手術をするのは原則、症状が重い人に限っている。隆起が小さく症状が軽い人は、洗浄や薬による保存的治療にとどめる。冷水や冷風の刺激を避ければ進行しにくいため、サーフィンなどをする際に耳栓をするよう指導する。耳栓は予防にも有効という。
 自らもサーファーの中西医師は「宮崎大学サーファーズイヤー解説サイト 」を開設し、ネット上でも情報発信している。「特に寒い時期は、マリンスポーツの際に耳栓をしてほしい。シリコーン製の柔らかいものが使い勝手が良いようだ。外耳道の痛みなど症状があれば、耳鼻咽喉科に相談を」と呼び掛けている。(共同通信 吉川良太)