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医療新世紀
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2013.01.22

患者に届くか希少疾病薬
日本発の研究、資金難
遠位型ミオパチー

有効な治療法がない、極めてまれな筋肉の病気に対する治療薬の候補が国内の研究で見つかり、一昨年までに医師主導で最初の臨床試験(治験)が行われた。しかし、実用化に不可欠な最終段階の試験に進む資金のめどは立っていない。背景には、患者数が特に少なく営利企業が手を出しにくい薬の開発を支える一貫したシステムの欠如があるとして、患者団体はそうした薬の開発を支援するための法整備を国に求めている。
20130122honki.jpg ▽日本で発見
 この病気は手指や足など体の中心部から遠い部位の筋力が徐々に低下する「遠位型ミオパチー」の一種で「縁取り空胞型」と呼ばれるタイプ。国立精神・神経医療研究センター神経研究所 の西野一三部長によると、1981年に同センターのチームが最初に報告した。
 発病は20~30代が中心。10年ほどで車いすが必要になり、やがて寝たきりになる人が多い。患者は国内に推定300~400人。中国、韓国や米国、イスラエルにもいるが日本が一番多いという。原因の遺伝子異常も2001年に特定された。
20130122honki1.jpg 西野さんらが治療薬の候補を見つけ、論文発表したのは09年のことだ。原因遺伝子の働きから、細胞の表面に分布する「シアル酸」の不足が発病に関わっているのではと考え、遠位型ミオパチーと同様の症状を起こすモデルマウスをつくり、シアル酸を飲ませて発症を防ぐ実験に成功した。
 ▽不透明
 薬につながる初の成果。だが製薬会社は見向きもしなかった。患者数があまりに少なく、10億円超とされる費用を治験などに投じて開発しても採算が見込めないためだ。
 開発実現へ奔走したのは08年に発足した遠位型ミオパチー患者会 (辻美喜男代表)。シンポジウムや署名集め、行政や企業への働き掛けを重ねた結果、製薬会社ノーベルファーマ(東京)が参加を表明。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から1億円余りの助成を受け、少数の患者らを対象に第1段階の医師主導治験が10~11年、東北大で行われた。
 安全性と有効性を確認し、薬として世に出すには、対象を徐々に広げた第2、第3段階の治験が必要だが、別の少額の助成を充てても資金確保のめどが立たず、先行きは不透明に。だが米ベンチャー「ウルトラジェニックス製薬」が関心を示し、米国での治験を開始。開発のストップは避けられたが、仮に米国で承認されても、日本で使うには治験が必要だ。
 東北大で治験の中心になった青木正志教授(神経内科)は「国内研究が世界をリードしここまで来た。国際共同治験を実施し、せめて日米同時の承認申請を目指したい」と話すが、予算の裏付けははっきりしていない。
 ▽包括システムを
20130122honki2.jpg 国内の患者数5万人未満の病気の薬は希少疾病用薬(オーファンドラッグ)と呼ばれ、厚生労働省は優先審査や開発費用助成などの支援を1993年度に開始した。患者数が千人に満たない"超"希少疾病用の薬は、開発がさらに敬遠されがちなのに追加支援策はなく、同省は2012年度に初めて助成率改善のための予算を付けたが総額は2億円にとどまる。
 22歳で縁取り空胞型と診断され、車いすで生活する患者会代表代行の織田友理子さん(32)は「開発が少し進む度に資金が途切れ、新たな助成先を必死で探すような今の制度では超希少疾病の薬の開発は進まない。市場が小さくても開発に取り組もうとする企業を包括的に支えるシステムをぜひ作ってほしい」と話し、国に法整備を求めるとともに、全国の地方議会にもそのための意見書採択を働き掛けている。(共同通信 吉本明美)