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医療新世紀
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2012.08.07

尊厳死、法制化の動き
延命中止でも医師免責
「命切り捨て」と危惧も


 死期が近い患者が自らの意思で延命措置を望まず、自然な最期を迎える「尊厳死」。超党派の国会議員連盟(議連)が法制化の準備を進めている。議連の法案は、延命を中止しても医師の刑事責任などを問わない内容だ。歓迎の声もあるが、障害者団体などは「命の切り捨てにつながりかねない」と危惧している。
2012.0807honki.jpg ▽ジレンマ
 「できれば議員立法で今国会に法案を提出したい」。7月12日、国会内で開かれた「尊厳死法制化を考える議員連盟」の集会で、増子輝彦会長(民主党参院議員)はこう繰り返した。会場には車いすに乗った障害者や人工呼吸器を付けた難病患者の姿も。支援団体の代表らが「終末期や障害者の定義があいまいだ」「命の軽視が始まる」と慎重な議論を求めた。
 医療技術の高度化に伴い、死期が迫っても、呼吸器やペースメーカーなどの生命維持装置に頼れば、呼吸や血液循環を維持することは容易になった。一方で「自分の最期は自分で決め、人間としての尊厳を保ちたい」と願う人も少なくない。
 オランダや米・オレゴン州などでは薬物を使った「安楽死」まで認めた法律もあるが、日本では尊厳死の手続きなどを明確に定めた国の指針や法律はない。患者の希望を尊重したい、しかし人工呼吸器を取り外すなどした場合、医師が刑事責任を問われかねない―。議連はこうしたジレンマを打開しようと、2005年から法制化を検討してきた。
2012.0807honki.gif ▽中止と不開始
 法案は終末期を「適切な医療でも回復の可能性がなく、死期が間近と判定された状態」と定義。患者本人が書面などで尊厳死を望む意思を示している場合に限定し、2人以上の医師による判定を条件とした。尊厳死に関与した医師は「刑事、民事、行政上の責任を問われない」とも明記した。
 具体的な医師の行為については二つの案がある。議連は当初、人工呼吸器装着や栄養補給などの延命措置を新たに開始しない、とした法案(第1案)を起草した。
 しかし「現に行われている延命措置の中止にまで踏み込まなければ法制化の意味がない」との意見も根強く、人工呼吸器取り外しなど、より積極的な延命中止を規定した第2案も取りまとめた。
 議連は、09年に4案を並べて審議した改正臓器移植法のように2案とも国会に提出し、各議員の判断で投票してもらう考えだ。
 ▽尊厳ある生を
 法制化を強く求めてきた「日本尊厳死協会 」の会員は現在、12万人を超えた。会員は延命拒否の意思を明記した「尊厳死の宣言書」に署名し、いざという時は医師に提示する。長尾和宏副理事長は「現状では患者の意思が明確でも希望がかなえられないことが多い。法律ができれば患者も医師も安心できる」と話す。
 一方、人の生死を法律で規定することには反発もある。人工呼吸器が不可欠な子どもたちの親でつくる「バクバクの会 」の大塚孝司会長(63)は「命の自己決定という聞こえの良い言葉の裏で、社会的立場の弱い人々が切り捨てられ、生きにくい世の中になっていくのではないか」と懸念する。
 議連もこうした声に配慮、障害などで意思表示が難しい患者は除外し「障害者の尊厳を害することのないよう留意しなければならない」との条文を法案に設けた。
 全国88の障害者団体を束ねる「DPI(障害者インターナショナル)日本会議 」の尾上浩二事務局長(52)は「尊厳死の在り方以前に、尊厳ある生をいかに保障するか。立法府で話し合うべきことは、むしろそちらではないか」と訴えている。(共同通信 土井裕美子)