47NEWS >  共同ニュース >  医療・健康  >  医療新世紀 >  町を挙げて胃がん対策成人式でピロリ検査長野・飯島町の取り組み
医療新世紀
がん
がん関連のニュースがご覧頂けます。
2012.01.24

町を挙げて胃がん対策
成人式でピロリ検査
長野・飯島町の取り組み

 胃がんの発生には、食生活や喫煙と併せて、ピロリ菌の感染が原因として深く関わっていることが分かっている。長野県飯島町 は、胃がん撲滅キャンペーンの一環としてピロリ菌感染検査の費用補助や、成人式を受診の機会として利用する事業を導入。町を挙げての取り組みによって、町民の健康意識を高める効果も出始めている。
 ▽5カ年計画
 南アルプスと中央アルプスの美しい峰々に囲まれた飯島町。しかし、長年の塩分の多い食習慣やピロリ菌感染率の高さもあり、高血圧や脳血管障害と並んで胃がんが多かった。1993~2004年度のがん死亡者のうち、胃がんは68人(21%)と最多だった。
 町は、地域の拠点病院である昭和伊南総合病院 (同県駒ケ根市)と協力し、07年度から5カ年計画で感染検査の補助事業をスタートさせた。19~69歳を対象に、約5千円かかる検査費用のうち約3500円を町が補助。「血液抗体検査」と「尿素呼気試験」という2種類の検査を併用する。
2012.0124honki.jpg 受診率を上げるため、09年度からは成人式の出席者に無料で呼気試験をする方式を取り入れた。町の成人は毎年100人前後。式の朝、呼気試験のため集まる新成人たちは、2回の検査の間に胃がんをはじめ健康についての講演で知識を深めている。3年間、式の出席者はほぼ100%、検査を受けたという。
 ▽波及効果
 昨年11月末までに感染検査を受けた町民は延べ1436人。対象年代のほぼ3人に1人になった。陽性率は07~10年度で36%。「5カ年で町民約1万人のうち3千人」という高い目標には及ばないが、町は12年度以降も補助の継続を決めた。
 同町住民福祉課保健医療係長の中村杏子さんによると、この事業によって単なる受診率向上にとどまらない効果が生まれたという。「全員で検査を受けた一家や、両親の感染を知って19歳になると同時に検査を受けた人も。町で会う人に除菌について相談されたこともあります」。住民のがん予防の知識を深め、検診への抵抗感を減らし、その大切さを考える機会になったと実感している。
2012.0124honki1.jpg この取り組みを発案した昭和伊南総合病院の堀内朗消化器病センター長は、大規模な臨床研究として米国立衛生研究所(NIH) に登録申請。ピロリ菌と胃がんとの関係についての貴重な研究として正式に認められた。町では、検査で陽性になった人たちに除菌を勧めるとともに、その後をフォローアップ。受診率の向上が今後、がんの抑制にどのような効果があるか、確かめる予定だ。
 ▽強く推奨
 北海道大 の浅香正博特任教授、山形県立中央病院 の深瀬和利消化器科長らのグループは08年、ピロリを除菌すると内視鏡手術後の胃がん再発のリスクが約3分の1に抑えられるとする研究成果を医学誌に発表。その後、胃がん治療のガイドラインも改定され、検査と除菌が推奨されている。
 研究グループは、対象患者のその後も調べて10年超の成績を解析する予定。深瀬科長によると「因果関係はさらにはっきりしたものになるかもしれない」という。では、自覚症状のない健康な人も、検査を受けた方がいいのだろうか。
 深瀬科長は「日本では保菌率が依然として高く、若い人の胃がんもしばしば見つかる。検査は簡便で、被験者の負担も少ない。胃検診の中で実施できれば望ましい」と強く勧める。深瀬科長らは山形市と協力し、2年間の限定ではあるが、こうした取り組みを始めている。除菌後に10%程度の人に逆流性食道炎が起こるが、多くは軽症にとどまるという。(共同通信 由藤庸二郎)