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2011.08.16

脳卒中まひ、数年後も改善
健康な側の脳活動を抑制
磁気刺激治療法を開発

 脳卒中でまひした身体は、リハビリテーションなどで回復するのは3、4カ月までで、それ以降は改善しないというのが通説だ。しかし、左右の脳のうち健康な側の活動を磁気の刺激で抑制し、損傷を受けた側の機能を引き出す「経頭蓋磁気刺激治療(TMS治療)」を慈恵医大 の安保雅博教授らのチームが開発。リハビリと組み合わせることで、発症後数年たった患者でも、状態を改善できる画期的な治療法として注目を集めている。
20110816kao.jpg ▽時間短縮
 千葉県に住む平間一道さん(66)は4年前に脳梗塞を発症し、脳に酸素を供給するための高圧酸素療法を受けたが、右半身不随の症状が残った。リハビリ病院での半年の訓練と、その後の施設での週2回のリハビリを続けたが、右手で物をつかむことはできず、辛うじて歩ける状態からは改善しなかった。
 テレビ番組でTMS治療を知り、慈恵医大で受診。ことし6月下旬から2週間の日程で、同大と提携している東京病院 (東京都中野区)に入院して治療を受けた。
  治療は、磁気を発生する装置を頭に当てる20分間の磁気刺激と1時間のリハビリ、1時間の自主訓練のセットを毎日、午前と午後に繰り返す。1週間は変化がなかったが、10日目ごろから指や肘が真っすぐに伸びるようになった。治療が終わるころには各指を動かし、本のページをめくれるように。肘も肩より上に上がるようになった。
20110816honki.jpg おはじきをつまんで移動させるなどの検査で、ほとんどの動作が入院前の3分の1の時間でできるようになった。「動く兆しが出てきた。訓練を続け、文字を書けるようになりたい」と平間さんは笑顔で話す。
 ▽バランス
 脳卒中は、脳の血管に血栓が詰まる脳梗塞と、脳の血管が破れる脳出血などがあり、日本人の死因ではがん、心臓病に次いで第3位だ。死に至らなくても、半身まひなどが残ることが多い。脳の左側が損傷すると右半身に、右側が損傷すると左半身にまひが現れる。
 磁気刺激は、毎秒5回以上の頻度で行うと刺激した部分の脳が活性化し、1回以下の低頻度で行うと逆に活動が抑制されることが磁気共鳴画像装置(MRI)を使った研究で分かっている。
 安保教授は動物実験などで、損傷したのと反対側の脳の活動を磁気で抑制すると、損傷を受けた部位の周辺では逆に活動が活発化することを突き止め、治療に応用した。
20110816honki1.jpg 安保教授は「脳が損傷すると、その活動を補おうとして健康な側の脳が頑張る。頑張りすぎて筋肉がこわばったり、損傷側の脳の活動を邪魔したりする。頑張りを抑えることで、左右の脳のバランスが良くなる。良くなった時に集中的に訓練をすると、動きが出てくる」と説明する。
  ▽全員改善
 現在のところ、治療対象は手や腕などの上肢のまひで、少なくとも親指、人さし指、中指の曲げ伸ばしがゆっくりでもできることなどが条件。上肢の動きをつかさどる脳の領域は表面にあって磁気を当てやすいこと、完全に損傷してまったく動かせないと回復は難しいことなどが理由だ。
  東京病院では2010年6月から11年4月までに、発症後の期間が平均4年8カ月の患者35人に治療を実施。2週間の治療後に行った評価テストでは、全員に手や指が動かしやすくなったり、関節が柔らかくなったりするなど何らかの改善がみられた。入院後は自宅で訓練を続けることで効果が持続するという。
 安保教授によると、肘が肩の高さまでしか上がらず、指も大きく開かなかった患者が発症10年後に治療を受け、ゴルフができるまでに回復した症例もあるという。
 TMS治療は、慈恵医大を含め全国8病院で実施している。(共同通信 戸部大)