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医療新世紀
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2011.07.05

紫外線照射で接着力向上
 歯根の定着期間半分に
  インプラントの新手法


 あごの骨にチタン製の人工歯根を埋め込み、歯を復元するインプラント治療。チタンと骨細胞が接着する性質を利用しているが、歯根が安定して仮歯を付けるまでの3~6カ月間、強くかめないという短所がある。最近、人工歯根に紫外線を照射して接着力を高める「光機能化技術」を使い、この期間を半分程度にする新手法が全国の歯科で広がり始めた。
 ▽接着力2倍以上
 米カリフォルニア大ロサンゼルス校(UCLA)歯学部の小川隆広教授は、20110705kao.jpg整形外科や歯科などで体に埋め込むチタン材料が劣化することを世界で初めて発見、2009年に発表した。劣化といっても、材質が変化するのではなく、製造直後から空気中の炭素が表面に付着し、実際に使われる数カ月後には細胞との接着力が約3分の1に低下するとの内容だ。
 一方で小川教授は、特定の波長の紫外線を照射すると炭素が除去され、接着力が2~3倍に高まることも動物実験で確かめた。小川教授の協力で国内メーカーが、歯科の治療現場で人工歯根に紫外線を照射する装置を開発。ことし1月から販売が始まった。
 最初に治療に取り入れた「なぎさ歯科クリニック」(金沢市)の船登彰芳院長によると、装置導入前の10カ月間に埋め込んだ人工歯根は222本で、うち8本が脱落、成功率は96%だった。装置導入後の10カ月間では168本中4本が脱落し、成功率は98%とほぼ同等だった。20110705honki.jpg
 ▽照射は15分
 大きな違いは、仮歯装着までの定着期間が導入前は平均約6カ月だったのに対し、導入後は同3カ月になったことだ。
 「成功率は変わらなかったが、治癒期間(定着期間)が圧倒的に短くなり、早くかめるようになった」と船登院長。通常、仮歯装着まで4~6カ月かかる上顎は、紫外線を照射すると2~3カ月となり、3カ月かかる下顎は2カ月になったという。歯を抜いてまもなくや、歯槽膿漏などで土台となる骨が不足している症例では、通常7カ月が3~4カ月で済んだ。
 紫外線の照射は埋め込み手術直前に行う。人工歯根を袋から取り出して、装置内の台に立て掛けて15分。準備も含め、約20分で完了し、患者に麻酔を施している間にできるという。
 金沢市内の自営業、上松亮子さん(70)=仮名=は、一定の条件を満たす場合に適用できる埋め込み当日に仮歯を付ける方式で、上顎6本、下顎4本のインプラント治療を2回に分けて受けた。「翌日からものが食べられるようになり快適」と喜ぶ。20110705honki1.jpg船登院長によると、接着力が強まる紫外線照射をしなければ、上顎については仮歯装着まで5カ月かかる症例だったという。
 ▽安全と持続
 紫外線照射の利点は定着期間の短縮だけではない。船登院長は「接着面積の小さい、より短い人工歯根が使えるので、骨の中にある神経を損傷する可能性が低くなる。歯周病と同じような症状がインプラント治療後に起こることが問題になっているが、それも少なくなるのではないか」と話し、安全性や持続性の向上にも期待を寄せた。
 人工歯根は世界で数百のメーカーがあるが、装置はほとんどの種類で使用できる。装置を導入した歯科医院は6月現在、全国で50を超えた。
 この技術を推進している「光機能化バイオマテリアル研究会」のウェブサイト で、導入済みの医院が分かる。同研究会によると、従来のインプラント治療費に1本当たり1万円から数万円程度を上乗せしている場合もあるという。(共同通信 戸部大)