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2011.02.15

胃がん検診の新手法 
血液でリスクを判定 
根絶、医療費削減に期待

 バリウムを飲んで台の上で体を傾け、エックス線で胃を透視する―。50年来行われてきた胃がん検診が近い将来、様変わりするかもしれない。胃がんの原因とされるヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)感染と胃の粘膜の萎縮を血液で調べる「ABC検診」を導入する自治体や企業が出始めた。胃がん根絶や医療費削減につながる可能性があると関係者は期待する。20110215honki1.jpg
 ▽ピロリなければ
 胃がんは、肺がんに続いて日本人のがん死亡の第2位を占め、毎年約5万人が死亡している。近年、ピロリ菌の感染により胃の粘膜が萎縮してがんが発生するとの研究結果が得られてきた。
 国立国際医療研究センター国府台病院 の上村直実院長の研究によると、平均50歳の1526人を約8年間追跡した結果、ピロリ菌感染者の集団は3%の人が胃がんになったが、非感染者の集団は一人もならなかった。上村院長は「ピロリ菌に感染していなければほとんど胃がんにならないということは、世界的にほぼ合意されている」と話す。
 胃粘膜の萎縮に伴い消化酵素に関連する物質ペプシノゲンの分泌量が減るため、ABC検診ではピロリ菌感染を示す抗体の有無とともに、ペプシノゲンの血中量を調べて個人の胃がんのリスクを判定する。
 基本的に、感染がなく萎縮も進んでいない人をA、感染しているが萎縮が進んでいない人をB、感染していて萎縮の進んだ人をC、萎縮が進みすぎてピロリ菌がすめなくなった人をDと4群に分類。低い方からA、B、C、Dの順で胃がんになる危険性が高まり、リスクに応じて胃がんを見つけるための内視鏡検査を受ける。この分類は除菌しない限りほとんど変わることはなく、血液検査は5年に1度でよい。
 ▽費用は半額以下
 ABC検診を推進しているNPO法人日本胃がん予知・診断・治療研究機構 によると、胃がんの年間発生率はA群はほぼゼロ、B群は千人に1人、C群は400人に1人、D群は80人に1人。A群は将来的にも胃がんにはまずならないと考えられ、無症状であれば内視鏡検査を受ける必要はない。Bは3年に1度、Cは2年に1度、Dは毎年の内視鏡検査を推奨している。20110215honki2.jpg
 群馬県の高崎市医師会によると、2006年に成人約1万7千人に実施したABC検診で、49%がA群、27%がB群、20%がC群、4%がD群と判定され、BCD群に対する内視鏡検査で44人に胃がんが見つかった。
 発見率は受診者の0・26%で、それ以前に行っていたエックス線による発見率0・17%を上回った。胃がん1例を見つけるのにかかった費用は、エックス線は437万円だったのに比べ、183万円と半額以下だった。
 ▽住民検診でも
 高崎市医師会でABC検診を主導した乾純和・乾内科クリニック院長は「ピロリ菌に感染したことのない人は無駄な検査から除外できる。エックス線検査のように、リスクのある人もない人も無差別に毎年検査をするのは妥当だろうか。20代は9割がピロリ菌に未感染だと分かったが、1割の感染者に除菌すれば、日本から胃がんがほとんどなくなる可能性もある」と期待する。
 東京都足立区や目黒区、埼玉県越谷市などではABC検診を住民検診として導入、高崎市や栃木県大田原市では11年度から予定している。企業でも神戸製鋼所が10年度から始めた。20110215honki.jpg
 こうした動きについて、厚生労働省がん対策推進室は「死亡率が減少する証拠があるのは、胃がんでは今のところエックス線検査だけで、国としてはエックス線検査を推奨している」との立場。ピロリ菌感染を考慮した検診については「研究班で評価を始めたばかりだ」としている。(共同通信 戸部大)(2011/02/15)