47NEWS >  共同ニュース >  医療・健康  >  医療新世紀 >  インフルより怖い感染症 毎年流行、乳幼児で重症化  知られざるRSウイルス
医療新世紀
今週のニュース
2010.10.12

インフルより怖い感染症 
毎年流行、乳幼児で重症化 
知られざるRSウイルス

 秋から冬にかけて、2歳未満の乳幼児が注意すべき病気は何か―。医薬品大手アボットジャパン が千人余りの親を対象に行った調査で、約9割が「インフルエンザ」と回答した。しかし、小児医療の専門家は「最も怖いのはRSウイルス感染症」という。せきなどの呼吸器症状を起こし、乳幼児は重症化しやすい。国立感染症研究所への報告では、今年も9月に入ってからじわじわ患者数が増えてきた。20101012honki1.jpg
 ▽記録的流行
 倉敷中央病院 総合周産期母子医療センター(岡山県倉敷市)の渡部晋一主任部長によると、RSウイルスには年齢を問わず、何回でも感染する。成人や年長児では鼻風邪程度で終わることが多いのだが、乳幼児では肺炎の約50%、細気管支炎の50~90%を占めるとの報告がある。
 最も流行する時期は冬場。「患者数も多くて、重症化しやすい。小児科医にとって最も怖い感染症だ」と渡部さんは指摘する。2009~10年の昨シーズンは記録的な大流行で、感染症法に基づく定点観測を始めた03年以降で患者報告数は最も多かった。
 04年8月~06年5月の倉敷中央病院への入院患者数は、インフルエンザ37人に対しRSウイルス感染症は243人。07年12月~08年3月に感染症で集中治療室(ICU)に入った小児の症例のうちRSウイルスは原因として最多の36%で、重症化するケースはほかの感染症に比べて圧倒的に多いという。
 ▽強い感染力
20101012honki.gif 患者の鼻水やたんが付着した手などに接触して感染すると、4~5日の潜伏期間の後、鼻水やせき、のどの痛み、発熱を伴う上気道炎を発症。そのうち約30%の患者は息が浅くなって呼吸数が増えたり、ぜーぜーと胸が鳴ったりして、より重症の肺炎や下気道炎に移行する。
 実は、2歳までにほぼ全員が感染するが「どの年齢でかかるかで重症度が違う。生後1年以内、特に6カ月以内で重症化の危険性が高い」と渡部さんは説明する。
 有効な治療法や特効薬はなく、酸素投与や輸液など、症状を軽減することしかできない。米国のデータでは患者の致死率は1~3%に上り、20世紀に大流行したスペイン風邪などの新型インフルエンザの致死率0・5~2%に匹敵する。
 感染力が非常に強く、流行期には保育園が閉鎖になったり、小児科病棟で院内感染を防ぐために専用部屋がいくつも設けられたりする。渡部さんは「鼻風邪の大人が赤ん坊を抱いて、RSウイルスを感染させる場合がある。手洗いを励行し、マスクなしで近づかないように」と警告する。
 ▽発熱なくても
 RSウイルス感染症で重症化の危険性が特に高いのは、36週未満で生まれた早産児や、慢性肺疾患、先天性心疾患を持つ子どもたち。治療薬はないが、「パリビズマブ」という薬を投与して重症化を防ぐことはできる。ただし、保険が適用されるのは28週以下の早産で生まれた1歳までの乳児や、心疾患のある乳幼児などに限られている。
 アボットジャパンの調査では、およそ5割の親がRSウイルス感染症を「まったく聞いたことがない」と回答した。20101012honki2.jpg
 渡部さんは「RSウイルスに限らず、生後3カ月未満の発熱は要注意。熱が出なくても、機嫌や食欲、睡眠のうち、どれかに問題があれば重症化の兆候で、医療機関を受診すべきだ」と助言する。治療法は無いが、早期に診断をすれば、症状を悪化させる脱水状態の改善などを図れるという。(共同通信 戸部大)(2010/10/12)