47NEWS >  共同ニュース >  医療・健康  >  医療新世紀 >  女児に多い毛髪胃石 背後に抜毛癖や食毛癖  精神的サポートが重要
医療新世紀
今週のニュース
2010.10.05

女児に多い毛髪胃石 
背後に抜毛癖や食毛癖 
精神的サポートが重要

 口から摂取したものが胃液や粘液の作用で固まり、結石となって胃の中にとどまってしまう「胃石症」。組成によって果物や野菜の繊維を主とする植物胃石、髪の毛が原因となる毛髪胃石などに分けられるが、子どもの場合は毛髪胃石が多く、患者の大半は女児であることが、過去の国内での症例を分析した順天堂大などの研究で分かった。20101005honki.gif
 毛髪胃石の背後には、精神的な問題が引き金となって自分の髪の毛を引き抜いてしまう「抜毛癖」や、それを飲み下してしまう「食毛癖」が存在する。手術などで胃石を除去しても、心の問題が解決しなければ再発の恐れがある。児童精神科医などによる診察や継続的なサポートが重要だ。
 ▽手術で摘出
 「内視鏡で胃の中に髪の毛の塊が見えた。びっくりした」。東京都保健医療公社豊島病院の渡辺直樹小児科医長と順天堂大小児科の山田浩之医師は一昨年秋、当時ともに勤務していた同大練馬病院で、初めて毛髪胃石の症例を経験した。腹痛や腹部の違和感を訴え、母親と一緒に救急外来を訪れた11歳女児。抜毛癖と食毛癖があり、髪は後頭部にわずかに残るのみ。暗い表情で何を尋ねても首を振るだけだった。
 エックス線撮影などで胃の内部に腫瘤のような病変が見つかった。内視鏡で調べた結果、巨大な毛の塊であることが判明し、毛髪胃石と診断された。やがて塊の一部が小腸に移動して腸閉塞を起こしたため、急きょ開腹手術が行われた。20101005honki1.jpg
 摘出された胃石は長径15センチ、重さ230グラム。胃全体を占めるほど大きかった。さらに5センチ大の胃石2個計100グラムも小腸から摘出された。
 渡辺さんは豊島病院に異動後の昨年春にも、毛髪胃石の9歳女児を診る機会があった。女児はその2年前から抜毛癖や食毛癖が現れ、自分だけでなく母親の髪の毛まで食べていた。頭頂部の髪は薄く、腹痛を訴えて救急外来を受診。胃石が細長かったため、開腹手術はせずに、口から入れた内視鏡で取り出せた。
 ▽理由は不明
 渡辺さんと山田さんは、1916年から2009年までに国内で論文報告があった20歳未満の胃石症例95例を分析した。すると93例が女性で、このうち80%超を13歳までが占めた。胃石の成因が明らかな症例のうち93%が毛髪胃石で、その大半に食毛癖があった。>
 男性の毛髪胃石が少ないことについて山田さんは「髪の長さが一因かもしれない。短いと胃にとどまらずに排出されるのではないか」とみる。
 胃石摘出後、女児2人に対しては髪を短く切る指導や心理サポート、定期的な検査が行われている。2人はなぜ抜毛や食毛をしたのか。11歳女児の場合は過度の習い事や学校でのクラス替え、さらには母親との関係が、9歳女児は学校でのいじめが、それぞれ要因として疑われたが、明確には分からないという。20101005honki2.jpg
 ▽親の過干渉
 北海道こども心療内科氏家医院の氏家武理事長によると、さまざまなストレスが抜毛の引き金になりうるが、最も影響が大きいのは家族関係だ。「印象では、子どもに過干渉の親が多い。内向的な子は親に反発できず、親への攻撃性を自分に向け、自分を罰するように髪を抜いてしまう」。さらに食毛については「乳幼児期への退行、つまり赤ちゃん返りと考えられる」と解説する。
 「胃石症まで起こす患者は少ないが、抜毛癖や食毛癖の患者は水面下にたくさんいると思う。実際には抜毛癖なのに、精神的な問題に踏み込みたくない医師が、円形脱毛症などと安易に診断しているケースも多い。子どもの髪の毛が薄くなるようなことがあったら、家族関係を含めた心理社会的要因がないかどうか、児童精神科医などにしっかり診てもらうべきだ」と氏家さんは指摘する。(共同通信 赤坂達也)(2010/10/5)