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2010.09.07

小児がんの子に夢の病院を 
自宅のような環境で治療 
国内初の専門施設建設へ

 長期の入院が必要な小児がんの治療。狭い病室で、子どもも、付き添いの家族も、ストレスの多い生活を強いられる。自分の家にいるような環境で、家族みんなが一緒に病気と闘えたら―。そんな「夢」をかなえる、国内初の専門病院を建設するプロジェクトが関西で進んでいる。
 ▽いつも家族と
 計画しているのは、患者家族や医療関係者などでつくるNPO法人チャイルド・ケモ・ハウス (大阪府茨木市)。2006年11月に発足し、施設の具体案づくりや建設費約8億円の調達に向けた寄付集めに取り組んできた。法人名は化学療法を意味する英語「ケモセラピー」に由来する。
  構想では、約3千平方メートルの敷地に2階建てを建設し、病室や診察室、処置室、ナースステーション、院内学級、プレールーム、共用のキッチンなどを整備する。19室ある病室はすべて個室で風呂やトイレを完備、家族が24時間滞在できる部屋も併設する。病室との間はガラスで仕切るため、隔離が必要なときでも互いの顔を見られる。家族はいつもそばにいることができる。
 院内に放射線治療の設備や手術室、大掛かりな検査機器は置かず、既存の大病院と連携して必要なときに出向いて設備を借りる。現在、13年4月の開院を目指し、阪神地域で建設地と連携病院の選定を急いでいる。 20100907honki1.jpg
 ▽わずか2坪
 国立病院機構大阪医療センターの小児科医で同NPOの理事長を務める楠木重範さん(35)によると、日本では年間に15歳以下の子ども1万人当たり1人ががんを発症する。最も多いのが白血病で、脳腫瘍、神経芽細胞腫が続く。大人のがんと違うのは比較的治りやすいことだ。「抗がん剤による化学療法の進歩で治療成績が良くなり、今は7~8割が助かる」と楠木さんは話す。
 だが、成績向上の一方で治療環境には問題がある。多くの場合、病室は大部屋を薄いカーテンで仕切ったわずか2坪の空間。患者用ベッドと付き添い用の簡易ベッド、生活用品、医療器具が所狭しと置かれる。プライバシーも守れない場所で、子どもたちと親は半年以上、長ければ1年も過ごさなければならない。
 「雑然としていて身動きもままならない。親子2人、病室でじっと過ごすしかなかった」。6年前、次女(当時2歳)を白血病で亡くした同NPO事務局長の萩原雅美さん(36)は振り返る。
 次女は生後10カ月で発症し大学病院に入院。再発を2度繰り返して力尽きた。この間、萩原さんは長女を実家に預けて24時間付き添いを続けた。家族離れ離れの生活が闘病を一層つらいものにした。気晴らしをしたくても病棟内に行き場所は無い。治療で免疫力が低下している子を、ほかの病気の子が出入りする場所に連れて行けば、感染を起こして命取りになる危険もあるからだ。 20100907honki2.jpg
 ▽全国のモデルに
 事務局次長で、昨年11月に8歳の一人息子を神経芽細胞腫の再発で失った田村亜紀子さん(36)も「2歳9カ月で発症してから6年間、入退院を繰り返した。病気とは直接関係のないことで、たくさんがまんした。そういう環境に子どもたちを押し込めるのは間違いだと思う。そして、しんどい時こそ家族は一緒にいたい」と話す。
 一方、医師として楠木さんにも悩みがあった。夜間の当直アルバイトで生計を維持する勤務医の労働実態、若い小児科医の減少...。「小児がん専門医が治療に専念できる環境を整えなければ」。患者家族と医療者の思いが重なり、理想の病院づくりにつながった。 20100907honki3.jpg
 「私たちの経験をモデルとして、同じような施設が全国に広がってほしい。ノウハウを提供したい」と萩原さんは話す。
 寄付や支援の問い合わせは事務局、電話072(646)7073。(共同=赤坂達也)(2010/09/07)