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医療新世紀
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2010.08.31

鼻水がのどに降下 
せきや睡眠不足の原因に 
後鼻漏、注射療法で改善

 鼻水がのどに落ちてくる感覚、のどの日常的な違和感やむずがゆさ、はなをかみたいが鼻水がうまく出てこない―。こうした症状があれば、あなたは鼻の病気「後鼻漏」かもしれない。ひどくなると、激しいせき込みや睡眠不足が慢性化することもある。人知れず悩んでいませんか。
 ▽理解されない
 東京都内の主婦、谷川美恵子さん(37)=仮名=は約10年前、風邪による鼻詰まりを解消しようとして市販の点鼻薬を使いすぎたのをきっかけに、大量の鼻水がのどの方に下りてくるようになった。たんのような粘りのあるものや、さらさらした水のようなものまで、一日中絶えず飲み込み、不快感が募った。時にはのどの奥を刺激してせき込むことも。職場では鼻水を吐き出しに頻繁にトイレに駆け込み、自宅では数分おきにちり紙を口元に当てた。
 夜中も容赦はない。息が苦しくなって2、3時間おきに目覚めた。そんな生活が続くうちに、外出したり人と一緒に食事したりすることもできなくなった。
 耳鼻科は10カ所も通った。「原因や症状をはっきりと伝えているのに、『気にしないように』とあしらわれた。日常生活に差し障りがあるのに、理解されなかった」と谷川さん。抗生物質や漢方薬、粘膜を焼くレーザー治療...。大掛かりな手術以外の治療はすべて試みた。しかし、少しも改善しなかった。
 そんな中、インターネットで見つけたアレジオ銀座クリニック (東京都中央区)を訪ねた。そこで初めて、鼻の奥の粘膜がひどく傷んでいるのを画像で見せられ、粘膜の炎症反応を抑える「粘膜注射療法」の1回目の治療を受けた。「まだ治療途中だが、症状は少し改善した気がする」と谷川さんは話す。 20100831honki.jpg
 ▽鼻腺が異常増殖
 愛知医大客員教授でもある同クリニックの呉孟達院長によると、後鼻漏は「鼻腺」と呼ばれる鼻水の出る組織が異常に増殖して、鼻水が過剰に出るようになるのが原因。鼻の穴から外に出れば「前鼻漏」というが、その場合は生活上の問題は通常の鼻炎とあまり変わらない。
 後鼻漏は粘膜が変性しやすい高齢者で発症するほか、慢性鼻炎や蓄膿症に併発して、またはポリープ切除や蓄膿症などの手術の後遺症で、あるいは点鼻薬の乱用でも発症する可能性がある。
 花粉症のようなアレルギー反応ではないため、抗ヒスタミン剤が効かず、有効な治療法がなかった。しかし、呉院長が鼻炎治療として開発した粘膜注射療法を今年になって約20人に適用したところ、症状の軽減効果があることが分かった。
 粘膜注射療法では粘膜下に潜在している増殖した鼻腺を小型の内視鏡で探り当て、エタノールを主成分とする薬剤を注射する。すると周辺組織が脱水、収縮して過敏な反応が抑制されるという仕組みだ。
 ▽疑い例は30%
20100831honki.gif 同クリニックが全国の20~69歳の一般男女500人を対象に調査したところ、後鼻漏という症状を知っていると答えた人はわずか2%。しかし、後鼻漏が疑われる冒頭の症状が当てはまると回答した人は30%に上った。
 これらの症状がある152人のうち「たんがからむ」と答えた人は51%。ほかに「睡眠不足」(47%)、「せき払いをする」(43%)、「のど風邪をよくひく」(41%)などで、多くの場合で生活上の弊害が現れていることが示された。
 呉院長は「後鼻漏はこれまで注目されておらず、効果的な治療法もなかったため、耳鼻科の医師でもなかなか対応できないことがあった。放っておくと、気管支炎や喉頭炎などにもなるので注意が必要だ」と話している。(共同通信 戸部大)(2010/8/31)