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2010.07.13

新薬登場、窓口負担も増大  
がん患者に影響深刻 
高額療養費制度見直しへ

 医療技術の進歩により、がんなど治療の難しい疾患でも画期的な新薬が相次いで実用化され、多くの患者の命を救っている。しかし、高価な新薬の登場は患者負担の増大にも直結する。長期治療が必要な患者への影響は深刻で、政府は高額な治療費について負担上限の見直しを検討している。
 ▽日に1万円以上
 染色体の異常が原因で起きる慢性骨髄性白血病(CML)患者らでつくる「いずみの会 」代表の田村英人さん(60)=相模原市。7年前に健康診断で病気が判明、現在まで治療薬「グリベック」を毎日飲み続けている。20100713honki.gif
 CMLは骨髄移植しか治療法のない重い疾患だったが、グリベックなどの薬によって、病気と共存しながら日常生活を送ることができるようになった。
 だが、グリベックの薬価は1錠約3千円。1日4錠の服用が一般的なので、薬代に毎日1万円以上(窓口負担で3千円余り)かかる計算だ。
 田村さんのように医療費が高額になる患者のために、公的医療保険には「高額療養費制度」が設けられている。保険から支払われる分を除く窓口負担が一定の限度額を超えると、払い戻しを受けられる仕組みだ。
 所得や年齢により上限は異なるが、70歳未満で一般的な所得なら自己負担限度額は月8万円強が目安。年に3回払い戻しを受けていると、4回目からは4万4400円が限度額となっている。田村さんはこのケースだ。
 ただ、高額療養費制度を利用しても、月に10万円近い薬代を窓口でいったん支払う必要があり、払い戻しに数カ月かかる。それまでの間、差額は持ち出しだ。
 「薬局での支払いが高額なので、他人の目をはばかる患者も少なくありません」(田村さん)
 管理職だった田村さんは5年前に会社を早期退職。会社員時代には感じなかった負担感が、次第に重くなっている。
 ▽「限度額下げて」
 がん患者の電話相談に応じる「がん電話情報センター」(東京)の橋本明子さんは「もうこれ以上は払えない、という家族からの相談は珍しくない」と打ち明ける。20100713honki2.gif
 全体の1割近くを占める医療費の相談では、白血病や乳がんなど、高額な薬を長期間用いる疾患が目立つ。「がんに限らず、働きながら闘病する患者にとって医療費負担は想像以上に重い。高額療養費制度の限度額は思い切って下げるべきだ」と訴える。
 300の患者団体を対象にした東京大医科学研究所 の児玉有子特任研究員らの調査によると、同制度を利用する患者の9割が、限度額は高額と感じ「引き下げてほしい」と回答。月々の支払い可能額は1万円前後との声が目立った。
 患者らの悲痛な声を背景に、長妻昭厚生労働相は先の通常国会で「遅くとも本年度中に高額療養費制度の見直しを検討したい」と答弁。菅直人首相も見直しに前向きだ。
 ▽がんは無料で
 東北大 の濃沼信夫教授(医療管理学)によると、がん患者の10年間の支出は平均1千万円。半分が窓口負担分だ。
 「高額療養費制度は少数の例外を救済するセーフティーネットのはずが、今ではがん患者の半数が利用している」と指摘。同制度の見直しに限らず、原則3割の窓口負担割合を引き下げるなど、大幅な制度改正が必要だと主張する。
 濃沼教授によると、フランスではがん治療費は無料である一方、風邪薬の自己負担は6割という。「軽い疾病では自己負担を増やし、がんなどは軽くするべきだ」と同教授。患者が費用に悩まされることなく、治療に専念できる環境を整えるべきだとしている。(共同通信 鎮目宰司)(2010/7/13)