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医療新世紀
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2010.05.11

重症の多汗症、80万人 
有病率、米国の2倍 
厚労省研究班が初調査

 原因となる病気がないのに手のひらや足の裏、脇の下などに多量の汗をかき、生活や仕事に支障をきたす「原発性(特発性)局所多汗症」に関する初の疫学調査結果を、厚生労働省研究班(代表、横関博雄・東京医科歯科大 皮膚科教授)がまとめた。日本人の有病率は米国人の約2倍、重症者は約80万人と推定される。研究班はこれまで国内にはなかった診断や治療の指針を策定。医療の向上につなげたいとしている。
 ▽難治性4万5千人20100511honki.jpg
 原発性局所多汗症は、薬の影響や甲状腺の病気、感染症などの合併症として起きる二次性の多汗症とは区別される。米国人の有病率は大規模な調査で2・8%との結果が出ているが日本人のデータはなく、研究班は今回、全国の約5800人を対象に初めて行ったアンケートから推定した。
 二次性と考えられるケースを含め、多汗を自覚しているのは7人に1人。原発性だけで見ると、有病率は手の多汗症で5・3%、足で2・7%、脇の下で5・7%。発症年齢の平均は13~19歳だった。
 生活上の苦痛が最も多いという手足の多汗症の人のうち「常に耐え難い苦痛を感じる」という重症者は0・64%で約80万人。手術以外の治療法では効果がない難治性の人も、約4万5千人いるとの結果が出た。
 ▽認知度低い
 「重症者は思った以上に多い。握手ができない、パソコンなどの電気機器が故障したり、紙の文書が破れたりするといった経験がある人もおり、仕事や勉強、対人関係に悪影響が出やすい」と横関教授。
 この病気は単なる汗かきと扱われがちで認知度が非常に低いが、患者の労働生産性はアトピー性皮膚炎や、じんましんの患者以上に低下しているとの解析結果も示された。20100511honki.gif
 研究班は欧米のものを参考に原発性局所多汗症の診断基準をつくった。明らかな原因がないまま局所的に過剰な発汗が6カ月以上認められ、さらに(1)最初の症状は25歳以下(2)汗は身体の左右対称に見られる(3)睡眠中は止まる(4)週に1度以上の症状(エピソード)がある(5)家族歴が見られる(6)日常生活に支障をきたす―のうち二つ以上に当てはまる場合をこの病気とした。
 重症度は自覚症状により4段階に分類。「ほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある」「我慢ができず常に支障がある」の二つを重症とした。
 ▽治療体系化へ
 横関教授によると、多汗症の治療には制汗作用のある塩化アルミニウムの水溶液を塗ったり、これを手袋に染み込ませて密封、効果を高めたりする外用療法のほか、患部を水につけて弱い電流を流す「イオントフォレーシス」という手法もある。塩化アルミニウムの治療法に保険は使えないが、薬の価格は比較的安い。
 海外では、神経から汗腺への伝達物質を遮断する効果があるとされるA型ボツリヌス毒素を患部に注射する治療も、脇の下の汗の場合を中心に普及しているが、国内では多汗症には未承認で、保険も使えない。
 重症者に対しては、発汗に関係する交感神経を胸部で切断する手術がある。根治性がある半面、別の部位が多汗になる「代償性発汗」が最近、問題視されており、手術をめぐりトラブルも起きている。「患者の重症度や合併症の問題を考慮せずに、多汗症だからといって、いきなり実施するようなことがあってはならない」と、横関教授。20100511honki2.jpg
 研究班はこうした治療の体系化や有効性、安全性の検証に取り組む一方、脳の働きや遺伝子との関係を調べ、新たな治療法の開発を目指したいとしている。(共同通信 江頭建彦)(2010/05/11)