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医療新世紀
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2010.04.27

「インプラントの課題」-(3)
「やらない勇気」も 
信頼できる医師に手術依頼 

 横浜市青葉区の沖歯科医院(沖淳院長)で、休診の日曜日を利用してインプラント(人工歯根)の手術が行われていた。執刀するのは沖さんではなく、長年信頼を寄せる柳岡崇・柳岡歯科医院院長。世界的な歯学研究機関である米ハーバード大フォーサイス研究所の客員研究員でもある柳岡さんは、開業する和歌山市から沖さんの依頼で月に1~2回手術に来る。
 沖さんは、義歯や人工のかぶせ物を扱う「補綴」の専門医。インプラントが急速に普及し、業者中心の講習を受けただけで歯科医がインプラントを始めるような風潮には抵抗があったという。
 だが、自分の歯を失った患者から「先生のところで最後まで治療を受けたい」と言われ、どうしても希望する人には、柳岡さんに執刀を依頼するようになった。治療上の責任は沖さんが負い、麻酔は鶴見大歯学部病院の歯科麻酔医に頼む。
 「責任が明確であることが大前提だが、自分ができないことは分担し、"やらない勇気"もあるのでは。患者が一番望むのは安全な手術」と、沖さん。
 柳岡さんがインプラント治療を始めたのは35年前。当時国内では、現在主流のチタンとは異なる材質の製品が使われ、埋め込み後の脱落や破損が多かったという。その後、学び直すことを決めた柳岡さんはハーバード大に留学して歯の再生や免疫を研究、帰国して再びインプラント治療を手掛けた。
 「昔は(通常の治療では使わない)手術着ひとつとっても簡単に購入できず、個人輸入して旧厚生省に掛け合って使用していた」と、柳岡さん。努力の積み上げで築いた信用が崩れはしないかと、今日の状況を心配する。
 インプラントには保険が使えず、患者の負担は1本当たり十数万~60万円ほど。ある歯科医は「診療報酬の問題もあり、経営上の理由で自由診療のインプラントや審美歯科を掲げる医師は少なからずいる」と話す。20100427onepoint.jpg
 「自分の歯をできるだけ残す治療をするのが歯科医。それがどうしても不可能な時の手段としてインプラントは正しいが、患者ときちんと話もしないまま、いきなり勧めるような医療は不信を買う」(柳岡さん)
 沖歯科医院の手術では、同医院に勤務する阿部友和歯科医師が毎回助手を務め、患者への説明も含めた治療を柳岡さんから学んでいる。沖さんは「十分なトレーニングを積んだ後、自らもインプラントを手掛けるかは、阿部医師が自分で考えてくれればいい」と話している。(共同通信 江頭建彦)(2010/4/27)