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2010.03.16
<セーフコミュニティー>
事故も自殺も予防できる
推進にボランティアの力
青森県十和田市の試み
けがや死を引き起こす事故などは予防することができる。そんな理念の下、スウェーデンにある世界保健機関(WHO)コミュニティー・セーフティー・プロモーション協働センターが推進する「セーフコミュニティー」という活動が日本でも広がりつつある。縦割り行政の垣根を越えた住民参加型の取り組みと、科学的根拠に基づく対策が特徴だ。
× × ×
澄んだ青空の下、雪に覆われた畑が広がる。2月半ば、青森県十和田市 郊外の「水尻ふれあい会館」に高齢者21人が集まり、「地域いきいき教室」が開かれた。
市の委託する介護予防事業。体操や口腔機能向上体操の前に、建築士の定喜久美さんによる「転ばぬ先の工夫」と題した講演が始まった。
「セーフコミュニティーって言葉を聞いたことがある人」と問い掛けると、数人が手を挙げた。
「けがしたり、病気以外で死んだりすることをなくして、安全に安心して暮らせるようにしましょうというのがセーフコミュニティー。じゃ、転んだことある人」
今度は一斉に手が挙がり、「何回も」「気い付けてて、転んでます」の声に笑いの輪が広がる。
「そこそこ、それが重要なの。気い付けてても転ぶのは、ほかに原因があるから。地域のみんなでその原因をなくしましょうというのがセーフコミュニティーです」
滑り止めマットなど100円ショップで買える物を使って家の中を安全にする方法の説明に入ると、参加した人たちは身を乗り出し聞き入った。
▽土地柄
十和田市は昨年8月、世界保健機関(WHO)のセーフコミュニティー認証を受けた。世界で159番目、国内では前年の京都府亀岡市に次ぐ。
活動を支えるのはボランティア組織「セーフコミュニティとわだをすすめる会」。定さんもメンバーで、以前から介護の現場に助言してきた。
十和田市は保健や防災など安全に関する分野のボランティア活動が盛んな土地柄。心の健康づくりに取り組む「十和田こころの会」の角田富美子会長は「みんな楽しんでやっています」と語る。
地域に出掛けて紙芝居を演じる。自殺予防という重いテーマを伝えるが、和気あいあいとした雰囲気で活動する。セーフコミュニティーのことを知り、参加を希望する男性も現れたという。
市民の力を生かし、行政の縦割りの壁を乗り越え、住民参加型の活動を進めるにはどうすればいいか。調整役の十和田市健康福祉部長、新井山洋子さんは「毎日悩んでいました」と振り返る。
初めは全くイメージがつかめなかった、と新井山さん。セーフコミュニティー活動を支援する上十三保健所(十和田市)の反町吉秀所長に勧められ、2005年に台湾のセーフコミュニティーを訪問し、具体像が見えてきた。
▽データ集め
手すりの全面に蛍光テープが張られ、非常口の表示は火災で煙が出ても見えるよう低い位置にある。スーパーでは客の数が表示され、一定数を超えると入場を制限。子どもたちだけで災害に遭ったらどうするかを体験学習や漫画で伝える。
「保健、教育、防災が一体となり市民の安全を守る仕組みができていて、どこに行っても安全に関する学習の場になっている。感動的でした」
日本の健康づくりは狭い分野での一方的な働き掛けになりがちだ。「それでは何十年やっても何も変わらない。セーフコミュニティーの活動しかない」と確信した。
小山田久市長は今年4月に「セーフコミュニティ推進室」を設け、土木や農業関係も含め安全にかかわる22の課が連携し本格的な活動を開始。
力を入れるのは全国に比べて多い自殺の予防のほか、死因で多い交通事故、高齢者の転倒事故、誤嚥の防止。煙探知機で火災による死亡を防ぐ取り組みも進める。5年後に事故や自殺による死亡の25%減を目指す。
市民への浸透はこれから。活動の効果を評価するには、けがのデータを集める仕組みが必要で、医療機関による協力を広げていくことも課題だ。
「セーフコミュニティーは、市民が自分の住む地域に誇りを持って生活するための鍵になる」と反町さん。定さんは「みんなが力を合わせれば、子どもの事故防止などでもっとすごいことができると思う」と語った。(共同通信 辻村達哉)(2010/03/16)
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澄んだ青空の下、雪に覆われた畑が広がる。2月半ば、青森県十和田市 郊外の「水尻ふれあい会館」に高齢者21人が集まり、「地域いきいき教室」が開かれた。
市の委託する介護予防事業。体操や口腔機能向上体操の前に、建築士の定喜久美さんによる「転ばぬ先の工夫」と題した講演が始まった。
「セーフコミュニティーって言葉を聞いたことがある人」と問い掛けると、数人が手を挙げた。
「けがしたり、病気以外で死んだりすることをなくして、安全に安心して暮らせるようにしましょうというのがセーフコミュニティー。じゃ、転んだことある人」
今度は一斉に手が挙がり、「何回も」「気い付けてて、転んでます」の声に笑いの輪が広がる。
「そこそこ、それが重要なの。気い付けてても転ぶのは、ほかに原因があるから。地域のみんなでその原因をなくしましょうというのがセーフコミュニティーです」
滑り止めマットなど100円ショップで買える物を使って家の中を安全にする方法の説明に入ると、参加した人たちは身を乗り出し聞き入った。

▽土地柄
十和田市は昨年8月、世界保健機関(WHO)のセーフコミュニティー認証を受けた。世界で159番目、国内では前年の京都府亀岡市に次ぐ。
活動を支えるのはボランティア組織「セーフコミュニティとわだをすすめる会」。定さんもメンバーで、以前から介護の現場に助言してきた。
十和田市は保健や防災など安全に関する分野のボランティア活動が盛んな土地柄。心の健康づくりに取り組む「十和田こころの会」の角田富美子会長は「みんな楽しんでやっています」と語る。
地域に出掛けて紙芝居を演じる。自殺予防という重いテーマを伝えるが、和気あいあいとした雰囲気で活動する。セーフコミュニティーのことを知り、参加を希望する男性も現れたという。
市民の力を生かし、行政の縦割りの壁を乗り越え、住民参加型の活動を進めるにはどうすればいいか。調整役の十和田市健康福祉部長、新井山洋子さんは「毎日悩んでいました」と振り返る。
初めは全くイメージがつかめなかった、と新井山さん。セーフコミュニティー活動を支援する上十三保健所(十和田市)の反町吉秀所長に勧められ、2005年に台湾のセーフコミュニティーを訪問し、具体像が見えてきた。
▽データ集め
手すりの全面に蛍光テープが張られ、非常口の表示は火災で煙が出ても見えるよう低い位置にある。スーパーでは客の数が表示され、一定数を超えると入場を制限。子どもたちだけで災害に遭ったらどうするかを体験学習や漫画で伝える。
「保健、教育、防災が一体となり市民の安全を守る仕組みができていて、どこに行っても安全に関する学習の場になっている。感動的でした」
日本の健康づくりは狭い分野での一方的な働き掛けになりがちだ。「それでは何十年やっても何も変わらない。セーフコミュニティーの活動しかない」と確信した。
小山田久市長は今年4月に「セーフコミュニティ推進室」を設け、土木や農業関係も含め安全にかかわる22の課が連携し本格的な活動を開始。
力を入れるのは全国に比べて多い自殺の予防のほか、死因で多い交通事故、高齢者の転倒事故、誤嚥の防止。煙探知機で火災による死亡を防ぐ取り組みも進める。5年後に事故や自殺による死亡の25%減を目指す。
市民への浸透はこれから。活動の効果を評価するには、けがのデータを集める仕組みが必要で、医療機関による協力を広げていくことも課題だ。
「セーフコミュニティーは、市民が自分の住む地域に誇りを持って生活するための鍵になる」と反町さん。定さんは「みんなが力を合わせれば、子どもの事故防止などでもっとすごいことができると思う」と語った。(共同通信 辻村達哉)(2010/03/16)


